雑伊、仙伊、etc
□竹取物語
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「曲者っ!」
ある月のない晩の闇に紛れて忍術学園に侵入しようとする曲者を、自主練中の文次郎達が発見した。手裏剣で応戦し、手答えがあったと思ったが、取り逃がした。
その曲者の行き先は保健室であった。
「何者だっ!?」
「曲者です」
「あれ?昆奈門さんじゃないですか?」
「やあ、伊作君、こんばんは」
「背中、血が出てるじゃないですか! どうしたんですか?」
「いやあ、こちらに来ようとしたら、潮江君達に見つかってやられてしまったよ」
「も〜、文次郎ったら僕の仕事を増やして…
全治2週間ってとこですね」
「しょうがないさ。曲者だからね。
今夜は君を掠いに来たよ」
「それはともかく、傷を癒す効果がある温泉を知っていますから湯治に行きませんか?」
こんな訳で伊作と雑渡昆奈門は湯治に出掛けることになった。
噛み合ってない会話は毎度のことで、保健委員の左近も口を挟むのをやめた。
「左近! 曲者が来なかったか?!」
「来ましたよ」
「もしかして、雑渡昆奈門か?」
「もしかしなくても雑渡昆奈門です」
「伊作は?」
「雑渡昆奈門と出掛けて行きました」
「うわ〜!やっぱり〜!」
「なんで止めないんだよ!」
「だって、やですよ。僕が止めたって伊作先輩が言うこと聞く訳ないじゃないですか!
これが置き手紙です。潮江先輩達が心配しないようにって」
「なになに」
《文次郎とみんなへ
昆奈門さんと湯治に行ってきます。
2週間で帰ります。
心配しないでね。》
「なんじゃこりゃ?」
一堂が沈黙した。
「…これで心配すんなって?
夏休みの小学生じゃないんだから、いつ、誰と、どこへ行くか書いてれば何処に行ってもいいってもんじゃねえだろ!」
文次郎が叫ぶ。
「普通、そうですよね」
と、左近
「助けにいくぞ!」
「待て文次郎、伊作はわざわざ置き手紙で2週間って書いてるんだぞ。
それより早く行ったら、あいつのことだから信用してないとか言って怒るぞ」
留三郎が言う。
「じゃあどうすりゃいいんだよ!」