Halloween Yard (main)

□第2話 New Visiter
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ここは怪奇の世界、Halloween Yard。

水平線まで遮るもののない赤い荒
野には、いつ、誰が作ったものとも知れない古い石畳の街道が東西にまっすぐ延びている。

その街道上に巨大な黒い馬車が停車していた。
車体は大きいだけでなく、普通の馬車とは大分様相が異なっている。
御者の席はなく、丸みを帯びた要塞のような建物の下に片側三輪の車輪がついている体裁だ。

これを牽く栗毛の馬たちは六頭。
いずれも像ほどもある巨馬で、朝日に浮かぶしなやかな馬の体からは、うっすらと湯気がたっている。
逞しい脚元にはかすかな朝もやが漂い、馬たちが足踏みするたびに細かにちぎれていった。
そして、馬の蹄と街道の石畳が触れ合う度に金色の古代文字が弾けては消えていく。

同様に、馬車の車輪も駆動とは無関係な内輪がゆっくりと回転しては金色の文字を放っていた。

これは、Halloween Yard に住む卯像無像の魔物どもを寄せ付けない呪いである。

数えるほどしか存在しない安全地帯以外は、決して油断ならないのがHalloween Yard というところだ。
当然、行商も旅も危険が伴う。
遠隔地への通信手段が無いわけではないが、広く普及しているとは言いがたく、離れた場所の情報は極めて入りにくい。

この馬車は各地を巡り、物資の運搬と情報提供によって利益を得ていた。

情報収集については、各地を調査して回り、分析、解析も合わせて行う。
特に怪奇な現象が見られたときには可能な範囲で原因究明にあたった。
時には調査の依頼を請け負うこともある。
運搬業で得る利益よりも、調査による情報提供の方がはるかにウェイトが大きい。

それゆえに、この馬車の銘は

゛調査艦MAZICAW゛
という。

クルーは約30名。

いずれも、別の世界からHalloween Yard という怪奇の世界へ招かれたゲスト(客人)だ。

帰る場所のないクルーたちにとっては、MAZICAWは単なる調査艦ではなく、我が家でもあった。
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