Halloween Yard (main)
□第2話 New Visiter
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一方で、何やら雲行きの怪しいテーブルがあった。
黙々と皿の上のものを片付けながら、整備班の副班長氷々が真向かいに座る狩猟班の班長バードックを睨み付けている。
氷々の機嫌の悪さは相当なもので、オレンジ色の長い髪が逆立ちそうなほど殺気が出まくっていた。
誰も恐ろしくて話しかけられない。
両隣のクルーはこっそりと彼女から距離を放している。
彼女がこの場でキレてとばっちりをくうのは避けたい。
そういう思いが顔にも態度にも出ていた。
対するバードックは悪びれた様子もなく、その視線を受け止めている。
「あんた、あたしに言うことがあるんじゃないのかい?」
「SASAGAKIの修理はちゃんと頼んだはずだぜ。」
「もう直ってるから、後で取りに来な。
毎度毎度、愛車を犠牲にしやがって、いっぺんあんたが壊れりゃいいんだ。
そうすりゃ、あんたも愛車の痛みがわかるだろ。
けど、そのことじゃないよ。」
「じゃあ、何だ?」
バードックはため息混じりに、ようやく食事の手を止めて不機嫌そうに氷々を見返した。
黒い肌のなかの鮮やかな緑の瞳が、どこか野生の獣を思わせる精悍な青年だ。
彼の不機嫌な表情はいつものことだが、この瞳に本気の怒気が混ざると黙って向き合うことが難しいくらいに恐ろしい迫力になる。
ただ、今は怒ってはいないようだ。
「その無自覚さに余計腹が立つ!」
「悪いがわからん。」
「FRC303ランチャー。」
「?回収して渡しただろう。」
FRC 303ランチャーとは、バードックが村の地下に持って行った装備である。
レアの力が解放されたとき、彼女に向かってバードックが構えていたものだ。
「内蔵してた精霊の石が力の発動機関部と一緒にメルトダウンしてた。」
「…。」
「もう、誰も修復不可能だよ。」
氷々が悔しそうにやや視線を落とした。
彼女を様子を見ていたバードックが大きくため息をつく。
「今更、言い訳にしか聞こえんだろうが、外部に損傷がなかったから気がつかなかったんだ。
悪かった。」
「どうせそんなことだろうと思ってはいたけどね。
レアの暴走した力はFRC303が放つ波動で相殺されるはずだった。
だけど、実際は力負けした。
だから溢れた力で村が半壊したんだ。
設計者の名誉のために言っておくけど、想定が甘かったわけじゃないよ。
設計限界を越えただけだからね。」
「わかている。
それでも、あれのお陰で俺たちは生きて帰れたんだ。
感謝している。」
「そう思ったなら、返却時にその礼をのべな!
本当に、いっぺん壊れてしまえ!この唐辺木。」
そう言った氷々の顔はもう怒ってはいなかったが、変わりにどこか寂しそうにみえた。
二人の冷戦が沈静化したのを感じた周囲のクルーはあからさまにほっとした様子を見せる。
こうして、MAZICAWの朝食は何事もなく終わるはずだった。
しかし…。