記憶の渦
□14 全てを
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エース「テルア!その……っ」
テルアの姿を見て駆け寄ったエース。
何かを言いたげだが口をもごもごするだけ。
どうテルアを故郷へ帰らぬよう説得するか考えているようだが、彼の頭では思いつかない。
……そんな彼にテルアはフッ…と笑う。
テルア「ーー心配はいりませんよ、エース」
エース「え? ………え…?」
一度目は心配いらないと言われて声を出したが、二度目は名前だけを言われ驚いて声を出したエース。
呼び捨てで呼ばれた名前。
今まではさん付けだったのに。何で……、
テルア「……ああ、失礼。 エースは隊長になったんでしたね。
エース隊長、の方が良いですか?」
『!』
エース「………テルア…」
ゆらゆらと揺れる瞳。
名前を呼べば、優しい眼差しを送られ笑顔を浮かべているテルア。
周りも息を詰まらせる。
頭に過るその答え。
テルアは、答え合わせをするように皆に言う。
テルア「ーー心配せずとも、どこにも行きませんよ。
自分、帰る故郷ありませんしね」
困ったような笑顔で言うテルア。
エースは自分を抑えきれず、勢いつけてテルアに抱きつく。
他の者たちも全てを思い出したらしいテルアの姿に安堵の息を吐いた。