記憶の渦
□14 全てを
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あの人が叫んでいた…。
目の前にいる男の前から離れろ…と。
でも、自分はすぐに動かなかった。
……動けなかった。
体が金縛りにあったような、一歩も動けず男は目の前まで来た。
ジン「弱いくせにしぶといようだなァテルア? 丁度いい…てめぇさえ居なけりゃ俺は…!」
テルア「ーー…」
誰…ですか?
……テルアのその言葉は、ジンの行動を一変させた。
ジンは最初は信じられなかったが、妙にイゾウが慌ててるのを察知し、テルアが記憶喪失なのを信じた。
そして、人質にとった。
イゾウを男たちに始末させ、後でゆっくりテルアを始末する。
テルア「………」
ジン「殺れ、お前ら」
テルア「え…?」
イゾウ「………」
イゾウが、殺される。
何かが、テルアの頭の中でフラッシュバックする。
それは一部一部が写真を見るように思い出される、記憶の欠片。
……最後に思い出されたのは、イゾウがジンに刺された時の記憶…ーー。
テルア「ッイゾウ隊長!!」
『!』
イゾウ「ーー…フッ」
イゾウが周りを囲う男たちに武器を目掛けられたその瞬間、テルアはイゾウの名を叫んだ。
するとイゾウはそれを待っていたようにニヤリと笑い、テルアに構わず地に置いた銃を手に取り一瞬で男たちを倒した。
人質のテルアがいるのに……しかしジンが次に気づいた時にはテルアは側に居なかった。
テルアは倒れた男たちの武器を取り上げたのか、ジンに武器を構え睨みつけていた。
ジン「ってめぇ…?!」
イゾウ「余所見するなジン」
ジン「?!」
イゾウ「ーーあばよ」
次に目覚めた時は…地獄よりもっとキツいだろうぜ?
イゾウは持っていた睡眠弾をジンに打ち込み、ジンは深い眠りについた。
白ひげのもとに生きて連れて行く為に用意していたようだ。
イゾウ「…ったく、一時はどうなる事かと…………おいテルア」
倒された男たちは50を超えるだろうか、
テルアが居なかったらもっと早くに終わっただろうに。
…しかし無事に事は終えた。
イゾウはテルアの元に近づくが、テルアは俯いている。
テルア「………。 自分が…、」
イゾウ「あ?」
テルア「自分が記憶戻らなかったら、どうする気だったんですか…?」
人質にとられていたテルアだが、彼はそれを抜けだす術を持っていた。
しかしそれは記憶が戻ったから、ジンから抜け出せただけの事。
記憶が戻らなかったら、イゾウは……。
イゾウ「俺がやられると?
はっ、ふざけろ。俺を誰だと思ってる」
テルア「………刺されたじゃないですか…」
イゾウ「ン?何か言ったか?」
テルア「っっ痛…!」
イゾウは黒い笑みの表情を浮かべながらテルアの頬を引っ張る。
するとそんな時、倉庫の入り口付近から足音が聞こえた。
?「ーー居たァ! みんなー!こっちに居たぜー!!」
そう叫ぶのはテルア達を見つけ、指を指して仲間に伝えているエースの姿。
すると、次第に人が集まってきた。
ジンが再び目覚め、最初に見たのは白ひげの姿…。
イゾウが言ったように、彼は地獄より恐ろしい世界を目の当たりするのは後の話ーー。