記憶の渦

□10 遡る記憶(2)
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あれからどのくらい時間が経っただろう…。

とある部屋で独房のように閉じ込められているテルア。
殺風景で、窓が一つあるぐらいの小さな部屋。
そんな部屋でテルアは、縄と手錠の二重で縛られていて、体全体を見れば怪我もしている。

船員にやられたようだ。
殴られても、蹴られても…何故2人を刺したなどと問われても、テルアは何も応える事はなかった。

しかし船員にやられた事など、正直今はどうでもよかった。


イゾウの安否はどうなったのか。
仮に……助からなかったとしても、奴はいつかは白ひげの暗殺を行う。

それだけは、絶対に避けなければならない。



テルア「何としても…ここから抜け出さないと……っ」



見張りは…多分外にいる可能性は高い。
あまり大きな音は立てられない。
しかし今外は嵐の海域。

少しの音程度なら聞こえないだろう。


ーーだが何とかして抜けだそうとした時、部屋の扉が開いた。

その入って来た人物に、テルアは冷や汗を欠かざるを得なかった。



サッチ「…俺が見張ってるから、お前ら席外せ」


「…分かりました」


「縛られてはいますが、気をつけて下さいよ。サッチ隊長」


テルア「(見張り……?!)」



サッチが…部屋に入ってきて、外にいた船員とそんな会話をしていた。

これは更に最悪な状況だ。
誰も部屋にいないから脱出を試みたのに、隊長であるサッチが見張りとなればもう抜け出す事など不可能…。
逆にこんな事なら、何故今まで見張りが部屋に居なかったのかが不思議なぐらいだ。


パタン…と部屋の扉は閉められ、2人だけとなるこの空間。

冷静さを保つが、不安は隠しきれない。
さっきとは逆にイゾウがもし助かっていたら、真っ先に狙われるのはイゾウの可能性も高い。

サッチに話す?
しかし信じてくれなかったら?

仮に、信じたとしてもだ……、
ジンを止められなかったらサッチは自分の二の舞になる。


それに……なにより、自分でジンを討ちたい。
イゾウや白ひげ海賊団には大恩がある。
例え目の敵にされようが、そんなのは今だけ。

アイツを野放しにしたままには、絶対したくない。

たとえ………ーー。



テルア「………」


サッチ「……さて、何から話すかね…」


テルア「……?」



まるで普通の会話をするかのよう…。
怒りが見当たらない……、

彼は、何を考えているのだ…?
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