記憶の渦
□09 遡る記憶(1)
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その晩は月明かりが綺麗な夜だった。
思わず自室等で月見酒をしたくなる船員はいるだろうぐらいに。
…そんな船員たちが眠りだした頃、テルアは廊下を歩いていた。
今日の見張りは16番隊であるらしい。
広い船の廊下…どこを見張るのかは前もって決まっているのだが、テルアはそれ構わずとある場所へと向かっていった。
すると、一人の人物を見つける。
その人物は酒を持っていて、廊下を歩いていた。
そのまま先に行けば、辿り着く先は…白ひげの部屋ーー。
テルア「……」
ジン「…………テルア、何か用か?」
テルア「!(流石にバレるか…)……いえ特に」
ジン「お前この辺の見張りじゃないだろ? 何故来た」
テルア「見張り中にお酒を持つのも如何なものかと?」
ジン「…親父に頼まれたのさ、酒に目がないからなァあの人」
テルア「そうですねぇ……親父に捧げるには確かに良いお酒です。
飲んだ事ありますよそれ」
ジン「へー、なんだ酒イケる口か?」
テルア「ええ。嗜む程度には、
ーーきっと親父は死ぬほど
美味い酒だと言ってくれますよ」
ジン「!…………」
目が笑っていない。
互いの懐をどう探ろうか…というような会話に、空気がだんだん冷たくなる雰囲気。
テルアの言葉にジンはピクリと眉が動き、その後2人の会話にしばし沈黙が訪れる。
先ほどまで笑っていたテルアだが、確信をついた後の今は真っ直ぐ目を逸らす事なくジンを見つめる。
ジン「……いつも俺を見てたよな? 何か不自然な所あったか?」
テルア「おや酒は否定しないんですか? …自分は冗談のつもりだったんですがねぇ」
ジン「……っち」
テルア「くす…、ああそうそう。
先の質問に一つだけ答えるなら…」
アナタが気に入らないから、ずっと見てただけですよーー。
テルアは懐からナイフ4本を取り出し、戦う態勢を取る。
ジンも戦う……と思えば、なんといきなり窓から酒を捨てたのだ。
ーー気づかれたから捨てた…?
テルアがそう思っていると、背後から声が聞こえた。
イゾウ「何してるお前ら?」
テルア「!………(そういう事か…)」
イゾウがやって来た。
ここに来たのは隊長だから船員が寝ていないかを見まわっていたのかもしれない…。
ジンはイゾウが来るのを気配かで分かったのか。
酒を捨ててしまえば今この状況で怪しいのは、武器を片手に持つ……テルアの方だった。