記憶の渦
□06 妖艶たる隊長
1ページ/2ページ
いつもは早く目を覚まし、食堂屋であるおじさんやおばさんの手伝いをしていた。
しかし、今はもう違う。
自分は海賊の船にいる…。
その事を起きてから思い出したのは、目を覚ましてしばらく天井を見つめていた時の事…、
その後身仕度を整えたテルアは、暇だからかもしくは好奇心からか、ゆっくり部屋の扉を開けて、部屋を後にした…。
*
*
こちらは甲板。
今はまだ明け方過ぎだからか、見張り以外の者は少ない。
しかしそこに、見張りでもないのに朝方に甲板にいるのは珍しい隊長がいた…。
イゾウ「………」
イゾウだった。
イゾウはキセルを吹かし、海の先を見ていた。
隊員たちは挨拶を交わすも、それ以上の会話はない…。
そんな時、今日の見張りである隊の隊長が話しかけてきた。
サッチ「もう1時間はそこにいるが、寒くねェのか?」
イゾウ「……。 別に。つーかもうそんな経ったのか」
1時間あまり体を動かさずに居たらしく、時々節々から音がなるぐらいに体をならすイゾウ。
サッチ「…複雑だろうけどよ、でも乗せるしかないだろ?」
イゾウ「そんなんじゃねーよ。 それと変な慰めはいらん」
疲れた、寝る。
そう言ってイゾウは船内に通じる扉まで歩き、ドアノブに手をやる。
しかしその前にドアが開いた。
…目の前の人物が、先に扉を開けたからだ。
テルア「っと…、すいません」
『!!』
テルア「………(綺麗な人だな…)」
イゾウ「……」
目の前にいるイゾウに思わずそう思ったテルア。
イゾウは目が合ったがすぐに反らし、何も言わずに船内へと入っていった…。
テルア「………」
その後ろ姿を目で見送った後、テルアは甲板に出て物珍しそうにキョロキョロしていた。
その間、やはり声を掛けられる者は……と思いきや、一人いた。
サッチ「探しもんでもしてるのか、テルア?」
テルア「え?」
………
……
何も知らない。
何も記憶にない。
初対面を思わせる態度。
今は記憶にないだろうが…、
きっと思い出したお前は、俺たちに第一に、こう言うんだろうな…。
やっぱり海賊なんか、大嫌いだ…と――。