記憶の渦

□06 妖艶たる隊長
1ページ/2ページ



いつもは早く目を覚まし、食堂屋であるおじさんやおばさんの手伝いをしていた。

しかし、今はもう違う。

自分は海賊の船にいる…。


その事を起きてから思い出したのは、目を覚ましてしばらく天井を見つめていた時の事…、

その後身仕度を整えたテルアは、暇だからかもしくは好奇心からか、ゆっくり部屋の扉を開けて、部屋を後にした…。







こちらは甲板。

今はまだ明け方過ぎだからか、見張り以外の者は少ない。
しかしそこに、見張りでもないのに朝方に甲板にいるのは珍しい隊長がいた…。



イゾウ「………」



イゾウだった。
イゾウはキセルを吹かし、海の先を見ていた。

隊員たちは挨拶を交わすも、それ以上の会話はない…。


そんな時、今日の見張りである隊の隊長が話しかけてきた。



サッチ「もう1時間はそこにいるが、寒くねェのか?」


イゾウ「……。 別に。つーかもうそんな経ったのか」



1時間あまり体を動かさずに居たらしく、時々節々から音がなるぐらいに体をならすイゾウ。



サッチ「…複雑だろうけどよ、でも乗せるしかないだろ?」


イゾウ「そんなんじゃねーよ。 それと変な慰めはいらん」



疲れた、寝る。

そう言ってイゾウは船内に通じる扉まで歩き、ドアノブに手をやる。

しかしその前にドアが開いた。


…目の前の人物が、先に扉を開けたからだ。



テルア「っと…、すいません」


『!!』


テルア「………(綺麗な人だな…)」


イゾウ「……」


目の前にいるイゾウに思わずそう思ったテルア。

イゾウは目が合ったがすぐに反らし、何も言わずに船内へと入っていった…。



テルア「………」



その後ろ姿を目で見送った後、テルアは甲板に出て物珍しそうにキョロキョロしていた。

その間、やはり声を掛けられる者は……と思いきや、一人いた。



サッチ「探しもんでもしてるのか、テルア?」


テルア「え?」



………

……


何も知らない。
何も記憶にない。

初対面を思わせる態度。


今は記憶にないだろうが…、

きっと思い出したお前は、俺たちに第一に、こう言うんだろうな…。


やっぱり海賊なんか、大嫌いだ…と――。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ