記憶の渦
□02 手配書
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テルア「おじさーん、賄(まかな)い出来ましたよー」
「ああ、置いといてくれ! 俺が行くまで冷まさないようにしとけよ」
テルア「いやおじさんが早く来れば万事解決だと思います」
小さな島にある村の食堂屋。
そこで働く青年の名はテルア。
色々あって1年前から、おじさんとおばさんの2人で経営してた食堂屋で働かせてもらっている。
とても礼儀ある子で、いつも笑顔な彼は今じゃ食堂屋に欠かせない存在だった。
「テルア、買い出しに行ってきてくれるかい?」
テルア「了解!」
テルアはおばさんから買い物カゴを受け取り、メモに書いてある店をまわったのだった…。
*
*
テルアは1年前、小さな島の海岸に流れ着いていた。
ここに来た時の記憶は無いが、記憶喪失では無いようで、自分の名前や故郷の事もちゃんと覚えていた。
しかし何にしても身寄りがなかったテルアは、自分を最初に見つけたおじさん達に引き取られ、息子同然に育てられたらしい…。
故郷は、記録指針が手に入るまではお預けにしているようだ。
「はなせ!はなせー!!」
「弟を離して下さい!」
テルア「ん…?」
買い物が終わってから、テルアは毎回日課のように海を眺めていた。
それが何故なのかは、自分にも分からないけれども…。
そんな時、島では見かけない男たちが姉弟に手を出してる様子を見て、テルアはすぐに駆けつけた。
テルア「あの、その2人離してくれませんか?」
「テルアにいちゃん…!」
「ああ? んだてめェ…」
「(……?)」
相手は海賊であるらしく、たまたま居合わせた姉弟を人質にして金や食料を巻き上げるという計画だそうだ。
…テルアは、不思議な気持ちだった。
相手が海賊なのに、恐れる気持ちが全くと言ってなかったのだ。
何故かはこれまた分からない…。
そんな事を考えていたら、いつの間にか無意識に、素手で海賊たちを倒していた……。
「お兄ちゃん凄い…!」
「テルアにいちゃんスゲーつよーい!」
テルア「……。 この人たちは自分に任せて、早く村に戻りなさい」
「うん、気を付けてねお兄ちゃん」