恋に落ちた海賊王
□この星に生まれて《シン》
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シン恋人設定♪
★シンSide ★
11月11日。
今夜の甲板は異常に華やかだ。
食堂からダイニングテーブルを持ち出して来て、テーブルの上にはレースのテーブルクロスが敷かれ、真ん中には花をさした花瓶が置かれている。
そして花瓶のまわりにはいつもより一段と豪華なナギの手料理が並んでいる。
ここは本当に海賊船か?
俺は思わず小さく吹き出してしまった。
『シン、ハッピーバースデー!!』
そう、今日は俺の誕生日だ。
☆☆「シンさん、お誕生日おめでとうございます!…これ、使って下さい!」
そう言って☆☆が差し出して来たのは、青い紙とリボンでラッピングされた小さな包みだった。
シン「あぁ…開けるぞ」
☆☆「はいっ!」
ゆっくりと包みを開けると、中には不格好な手編みの手袋が入っていた。
☆☆「あの…編み物初めてなので下手くそなんですけど…」
☆☆はそう言うと叱られた仔犬みたいにショボンとした。
俺は無言で手袋を手にはめてみる。
不格好ではあるが、大きさも丁度よく暖かい。
そのガタガタの編み目から、慣れないながらも必死に一人で編んでいる☆☆の姿が浮かんでくる。
俺は心配そうに顔を覗き込んでくる☆☆の頭を手袋をはめたままの手で撫でて
「あったかいな…サンキュ」
と微笑んだ。
いつもなら嫌味の一つでも言っている所だが、今日は勘弁してやる。
思えば2ヵ月程前から、☆☆の様子がおかしかった。
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《夕食後、食堂にて》
☆☆「さぁ、シンさん!遠慮なくここにバーンとやっちゃって下さい!」
シン「…何で俺がこんな事をやらなければいけないんだ。」
☆☆「いいから!何も言わずにババーンとどうぞ!!」
シン「何で俺の手形なんて取るんだ!」
☆☆「お堅い事言わずに!一瞬ですから!一瞬!」
シン「お前、悪徳商法のセールスマンみたいになっているぞ。」
☆☆「…んもう!シンさん、早くっ!」
シン「手形を取って、どうする気だ。」
☆☆「…それは…シンさんの写真と共にアルバムに…」
シン「赤ん坊の成長記録か!(怒)」
☆☆「シンさぁーーーん!;」
珍しく引かない☆☆に内心困惑していると、本を読んでいたドクターがひょっこりと顔を出して「シン、☆☆ちゃんが必死に頼んでいるんだよ?早く押してあげたら?」と微笑みかけて来たのだった。
☆☆「ソウシさぁ〜〜〜ん(;_;)」
ソウシ「…ね?(^-^)」
シン「……………。(-_-;)」
ナギ「安心しろ、シン。このインクは食紅だ。舐めても安心だ。」
シン「俺は赤ん坊か!(激怒)」
最早、ここに俺の味方はいない…
そう悟った俺は乱暴にインクの入ったトレーに手を突っ込み、テーブルに置かれた紙に手形を押したのだった。
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(フッ…そうか、そういう事だったのか)
恐らく、俺に感づかれずに手のサイズを知ろうと、無い知恵を搾って手形を取るという結論に至ったのだろう。
俺はしばらく手袋を見つめたままでいた。
☆☆「シンさん、いつも手が冷たいから…舵を握る時には外さないといけないかもしれないけど…それ意外の時に着けてもらえたらなって…」
そう言って☆☆が顔を赤くしている。
誕生日か…
お前に出逢うまでは、俺は誕生日を迎えても何も感じなかった。
だが、お前が俺の前に現れてから、こんな日も悪くないと思うようになった。
お前と出逢って、俺の人生は変わった。
こんな俺でも、生まれてきて良かったなんて思えるようになるんだな。
これからもずっと、俺の隣で微笑んでいてくれ。
愛してる…
不格好な手袋の温もりを感じながら、俺は心の中で囁いた。
END ☆
シンさん、ハッピーバースデー!(*^^*)