恋に落ちた海賊王
□目の前の貴方[ソウシ]
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「はい、ご褒美」
そう言ってソウシさんが私にくれたのは不思議な色の液体が入った小瓶。
医務室の大掃除を頑張って手伝ってくれたから、と優しい微笑みを浮かべ、小瓶を私に渡すと、いつもみたいに優しく頭を撫でてくれる。
ソウシさんは気付いてはいないでしょう。
ソウシさんに見つめられるだけで
何気無く触れられるだけで
私の心臓が身体から飛び出そうなくらいに高鳴っている事を。
私は胸の高鳴りを誤魔化すように手のひらでユラユラと揺れている、ピンクとも紫とも見れる色の液体を見つめる。
「綺麗・・香水ですか?」
私の問に、ソウシさんはフッと急に不敵な笑みを浮かべる。
「惚れ薬だよ。」
ソウシさんがそう言った瞬間、私の頭は混乱する
不意に、3日前の宴で船長に言われた言葉が頭に浮かんできた。
「おう、☆☆。乗船してしばらく経つが、好きな男はできたのか?」
豪快に笑いながら放たれた船長の言葉に、私は何も答えられず、金魚のように口をパクパクさせるしか無かった。
本当の事なんて、言えない。
頬が熱い
耳が熱い
涙が出そう
そんな私をソウシさんはいつもの優しい微笑みで見ていた。
そして、「船長、セクハラも程々にして下さいよ。」と、優しくフォローしてくれた。
再び意識を戻すと、クスクスと笑うソウシさんがいた。
「どうやら、その顔はお目当ての彼がいるようだね?」
ソウシさんはフフッと笑うと、飲み物などに1〜2滴入れてごらん、と微笑んだ。
そして、
「早速、使って来てみるかい?」
とイタズラっ子みたいな微笑みで言った。
その時、私の頬を涙が伝った。
もう、私のソウシさんへの気持ちが、抑えられなくなっていた。
ううん、本当はもうとっくに限界を越えているのに、気が付かないからなのか、ソウシさんは変わらず、私に優しく微笑んでくれる。
勿論、その優しい眼差しは、好きな女性に向けられるものではなく、年の離れた妹を可愛がるような眼差しである事は、恋愛経験が無いに等しい私にも分かっていた。
でも、私はソウシさんをお兄さんとしてなんて、見れない。
一人の男性として好き。大好き。
私は溢れる涙を抑える事が出来ず、うつ向いてしまった。
「?!・・どうしたんだい?」
心配そうに私の顔を覗き込むソウシさん。
肩に優しく置かれた手、額がぶつかりそうなくらいの距離にはソウシさんの顔がある。
こんな事、他の女の子にもやるの・・?
そう思ったら、怒りにも似た感情が湧いてきた。
私はキッとソウシさんを睨むと、小瓶のフタを開けた。
「・・?!☆☆ちゃん?!」
「それは、好きな男の人に・・!」
ソウシさんが静止させようとするのを無視して、私は小瓶の中の液体をソウシさんの顔をめがけて振りかけた。
「私が好きな人は、目の前にいます!!」
私は気が付いたら叫んでいた。
ソウシさんは、唐突な出来事に目を丸くしていたけれど、次第に頬が紅潮し、私を見つめる目が変わってくる。
「・・全く、君は困った子だね。
」
そう言って私を抱き締めると、頬に、おでこに、そして唇に優しいキスをくれた。
唇が離れ、見つめ合うと、ソウシさんは今までに見たことの無い、妖艶な微笑みを浮かべていた。
私が言葉を失っていると、今度は深いキスをくれた。
あぁ、惚れ薬って、本当に効くんだ・・
薬の効き目が無くなったら、ソウシさんは私の事、嫌いになっちゃうかな・・。
徐々に身体の力が抜けて、何も考えられなくなる。
ソウシさん・・
好き
大好き
私は初めての甘い夜に溶けていった。
★★★★★★★★★★★★★★★
《後日》
朝食前の食堂にて
ソウシ:「おはよう。」
トワ:「あっ、ソウシ先生!おはようございます!あれ?☆☆さんは?」
ソウシ:「あぁ、疲れているみたいだから、まだ寝かせているよ。」
シン:「ドクターも大変ですね。」
ソウシ:「うん?何が?(^-^)」
シン:「フッ・・あんなガキに盛られて。」
トワ:「えっ?えっ?それってどういう・・」
ソウシ:「フフッ・・何を言ってるの?」
ソウシ:「・・あれは私が仕掛けた罠だからね。(^-^)」←(天使の笑顔)
シン:「・・・。」
―惚れ薬と言って☆☆に渡した小瓶の中身は、実は単なる着色した水だった・・という事実は、その日の晩にソウシの口からカミングアウトされるのだった。