恋に落ちた海賊王

□瞳の中の未来 [♪Song :南野陽子]
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もう、どれくらい前だろう。

そう…多分、一年半くらい前、私はひょんな事からシリウス海賊団の一員になった。


船室がいっぱいという事で、同室になる相手を選べと船長に言われて、私は迷わず一番優しそうなソウシさんを選んだ。

ソウシさんは嫌な顔一つせずに私を受け入れてくれた。

それどころか、これでもかと言う程優しくしてくれて、危険な時にはいつでも守ってくれた。


ソウシさんは、いきなり海賊船に乗る事になって不安だった私の心を優しく優しく包み込んでくれた。


気がついたら、いつもソウシさんを見ていた。


一人の男の人として、意識をするようになった。


ソウシさんを意識するようになって、私は気がついてしまった…


ソウシさんの視線の先には

ソウシさんの隣には…




常にナギさんがいた…



ソウシさんが不寝番の時、外を出歩くと、見張り台からソウシさんとナギさんの楽しそうな話し声が聞こえてきたりした。


ある日、不寝番でもないのにいつまでも部屋にソウシさんが帰って来なくて、心配になった私はソウシさんを探しに部屋を出た。


医務室で薬の調合でもしてるのかな?と思って覗いてみたけど、医務室にソウシさんの姿は無かった。


まさか…


今日の不寝番は…ナギさんだ…


不安な気持ちを抑えて、私は見張り台に向かった。


見張り台の下まで行くと、やっぱりナギさんとソウシさんの話し声が聞こえた。


話の内容はよく聞こえない…けど、話し方などで、二人が特別な仲だと私にでも分かった。



どうしよう…


邪魔したい…


どうして?


どうして、私の傍にいてくれないの?

どうして、私を見てくれないの?


ナギさんの事だって、嫌いではない。
嫌いになんて、なれない。

無愛想に見えて、実は誰より周りに気を遣っていて、人情深くて、私にとってはお兄ちゃん的な存在。

ちょっと指を切っただけでも医務室に行けと言って、私が受け持っていた分の仕事を引き受けてくれたり、辛くて泣いていたら、頭に巻いているバンダナを取って貸してくれたりする。


そんな人だから、ソウシさんも惹かれたのかな…


二人の楽しそうな話し声を聞きながら、私は何も出来ず、その場に立ちすくんでいた。


すると急に冷たい風が吹いてきた。

寒い時期、しかも夜の海の風は息が出来ないくらいに冷たくて。


「…うっ…」


思わず声を出してしまった。


すると、見張り台から二つの影が覗いた。


「…?☆☆ちゃん?」


ソウシさんが目を真ん丸にして驚いている。

私は泣きそうになる気持ちを抑えながら、笑顔を作った。


「ソウシさん、部屋に戻って来ないから、どうしたのかなって…」


「あ、そっか。ごめんね?もうすぐ戻ろうと思っていたところだよ。」


そんな優しい笑顔が胸に痛い。


「…って、☆☆ちゃん!そんな薄着で…こんなに寒いのに、風邪引いてしまうよ?」


再び驚いた顔をしたソウシさんは急いで見張り台から降りて来て、私の肩を抱いた。


ああ、忘れてた。私、パジャマのまま外に出ちゃったんだ。寒いわけだよね…


私が「えへ…ごめんなさい。」と笑って見せると、ソウシさんは私の肩を抱いたまま、「さぁ、部屋に戻ろう」と微笑んで、一緒に部屋に戻ってくれた。


邪魔…したよね?


ごめんなさい。


でも、私…聞いちゃった…


二人の楽しそうな話し声が途切れた時

チュッ…と、唇が触れ合う音がしたのを…


「ナギ…」


と、吐息混じりの声でナギさんを呼ぶソウシさんの声を…


私は…どうすればいいんだろう?

この想いはどうすればいいんだろう…




次回に続く⇒
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