ぽん小説
□橋を渡りきるまでの話
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「どうしたの、急に」
声をかける。
傘ごしにざぁーと雨と川の水音が聞こえた。
よく氾濫するこの川の橋はわけがわからないくらい高い。
きっと小柄な彼女なら十人分縦に並んだって、この橋の高さには全然足りない。
彼女は、橋から少し身を乗り出すように川面をみつめていた。声を、また、かける。
「なにかあった?」
でもあの川の底はとても浅い。
今でこそ、雨で水かさが増してるけど、それでも水位は彼女のお腹までしかないんじゃないかと思う。
この橋から落ちたら間違いなく死ぬ。
「別に」
彼女がこちらを見た。
口を尖らせながら、ちょっと拗ねたような口調だった。
それから再び、彼女は川面に視線を落として黙ってしまった。
彼女のオレンジ色の傘が、目の前でくるくると回った。