でこ小説

□チョコレート
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「寒くないわ。全然、寒くないの」
「見てるこっちが寒ぃんだけど」
「じゃあ暖めて?」

ほら、と両手を拡げたお嬢の膝に、駄菓子屋は慣れた様子で飛び込んだ。お嬢の身体は、駄菓子屋が思っているよりも冷たい。駄菓子屋はお嬢をぎゅうぎゅう抱き締めた。

「ひやっこい」
「そうかしら?」
「…駄菓子屋は、何も、何も訊かねぇよ。お嬢」
「うん」

お嬢は、駄菓子屋の跳ねっ返りの髪に顔を埋めた。駄菓子屋からは甘いチョコレートの香りがした。多分、いつものように商品をくすねたのだろう。

「くすねてねぇべ!ちゃんと買いました!」
「あははっ。駄菓子屋、口にチョコついてる」
「え?ほんとに?」
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