でこ小説

□三
2ページ/7ページ

「…失礼しました。えぇと前回ですね、うちの隊長が道端で駄々捏ねて犬の家にたどり着かなかったんです、が…」
「犬のお袋さんがあんまり遅いんで迎えにきてくれたんや。どーもぉ久しぶりです隊員だよ!犬、動かない」
「はーやーくー」
隊員は独りで上手く浴衣が着れない犬に浴衣を着せていた。
「ま、そう言うことなんで今は犬の家でお世話になっていますってか犬の家凄いな」

「え?そう?」
帯を巻いてもらっている犬はぽかんとした。
「だって、ここの旅館相当古いだろ?それに部屋数も多いし室内も高級感半端ないし」
これとか、と副隊長は生け花が生けてある花瓶をもちあげた。
小ぶりの、ほんのりと桜色をした品のある花瓶だ。
「べ、別にそんな大したことないよ!その花瓶だって百万いかない安物だし」
『えっ?』
「それにいつもは一番いい部屋空いてるんだけど今日はたまたま空いてなかったんだよね」
だからこんなボロい部屋でごめんね、と言った犬の言葉に三人は固まった。
(いやいやどこがボロいんだこの部屋!)
(めっちゃ広いやん。なんだったら俺の家より広いやん!)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ