でこ小説

□変わればいいってもんじゃない
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「あ…ごめんごめん」
お嬢は学新の背中に張り付いた駄菓子屋に謝った。
「お嬢が…鬼に…鬼のお嬢に…鬼嬢だべ」
駄菓子屋はお嬢を学新越しに警戒しながら何やらぶつぶつと呟いている。
「っはは、鬼嬢って!何ですか!あ…すみません」
学新は駄菓子屋の言葉に思わず笑ってしまった。
が、お嬢に睨まれたので口をつぐむ。
「お嬢、落ち着いて。ほら俺のゼリーあげるから」
ホストは、まだ手をつけていないみかんゼリーを、お嬢の前に差し出した。
お嬢はゼリーとホストを交互に眺める。
「…ありがとう」
お嬢は甘い物に目がなかった。

「ったく、イッシーのせいで怒られたじゃんか」
どうしてくれんの、と保育士は医師の腕を振り回した。
「知らね、離れろよウザイな」
居間の外にある縁側。
そこで食後の一服を決め込む医師は、保育士にされるがままに腕を振られていた。
辺りは微かに朝日の気配を感じるが、それでもまだまだ青闇の時間。
ひゅっと吹いた風に、保育士は身体を縮ませた。
「さみぃ!」
「うあ!?あぶねっ」
ふーっと紫煙を吐いた医師は、煙草を落としそうになった。
保育士が自分の腕に抱き着いてきたからだ。
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