でこ小説

□過ぎる夏の日
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「こっちにきて下さい。乾かさないと」
「いや別に大丈夫…ねぇ聞いてる?」
きゃあきゃあと彼女達は言い合いながら、ホストを奥に連れていってしまう。
「なんなのあれ」
一瞬の出来事に保育士は目を丸くする。
「別に。ホストがくるといつもあぁなの」
放っておいて、と言ってお嬢も保育士の手をとり店内に案内した。

「ホストが来ると、女の子達がお客さんそっちのけで迷惑なのよね」
飲むわよね?と言ってお嬢は保育士に適当に酒を作っている。
カラカラとグラスの中で酒を作る手は、手慣れたものだ。
「へぇ、どうりで。凄いねホストくん」
保育士は遠くの席でホステス達に囲まれるホストを眺めた。
「で?お姫様は王子様をとられて悔しいわけだ」
「はぁ?」
きひひひと保育士は笑ってお嬢が作ったグラスを受け取った。
「姫を守るのは王子だろ。なぁ…あの日、何があったよ。先生に教えてみ?」
「…別に」
「お嬢。拗ねない」
自分の杯も作り、お嬢は拗ねたように話をした。
「…仕事の途中で、私が絡まれて喧嘩になったの」
「どんなやつと?」
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