でこ小説

□過ぎる夏の日
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そう言って、ホストは手に持っていたコートでくるんだ紙袋を取り出した。
それは小さく綺麗な装飾が施されたものだった。
保育士は紙袋をみて考える。
「じゃあさ、付き合って欲しいとこがあるんだ」

「ちわーす」
「いらっしゃいませ…ってあら?保育士じゃない」
「ホストくんもね」
「こんばんは」
保育士がホストを連れてきたのは、お嬢の働くバーだった。
お嬢は呼び名の通り、ホステスとしてこの歓楽街で働いているのだ。
「ホストが?なんで」
真っ赤なドレスに身を包んだお嬢は、ホストの姿をみるなり眉をひそめた。
「付き添いだよ」
「へぇ…ってあなたずぶ濡れじゃない。大丈夫?」
「ヘーキだよ。あ、そうだお嬢こ」
「あれ!?ホストさんじゃないですか!」
「本当だ!お久しぶりですホストさん!」
お嬢とホストが二人で話をしていると、後ろから黄色い声が上がった。
「あーこんばんは」
声の正体は、お嬢の同僚のホステス達だった。
ホストは耳に響く声に、辟易としながらも彼女達と会話を始めた。
その律儀な様子は間違いなくホストのそれ。
「なんで最近来てくれなかったんですか!」
「っていうか濡れてる!?大丈夫ですか?」
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