でこ小説

□まんじゅうの話
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「じゃあなんで夏の格好してるんです?」
学新の問いかけに、駄菓子屋は口をパクパクと動かした。
とうとう喋ることを放棄したようだ。
「なんて言ったんだ?」
「ぱくぱくぱくぱく」
「え!?なに?」
医師に、駄菓子屋の意思は届かない。
「『暑かったから脱いだ』って言ってます」
結局、二人の様子に焦れた学新が口を挟んだ。
その言葉に医師は自身の耳を疑う。
昨日は大寒波のせいで、この年一番の冷え込みだったはず。
お天気予報のお姉さんが言っていたし、間違いない。
はぁっ、とため息をついて学新は言葉を続ける。
「実は昨日ホストさんに、チョコレートボンボンを頂いたんですけどね、駄菓子屋さんてば全部食べて酔っぱらったみたいです」
「…ったく。じゃあ風邪の原因はホストか。まぁ介抱しきれなかった学新も同罪だな」
「え?僕のせい?」
「違わねぇだろ」
「えー!?」
不満そうな声をあげた学新を無視して、医師は何事かを書き込んでから、カルテを通りすがった年配の看護婦に渡す。
「薬だすから。今日は1日安静にしてろ」
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