でこ小説

□5
2ページ/6ページ

「お、おいやめてやれ!落ち着け!」
お嬢は拳を振り上げてホストに殴りかかった。
医師が慌ててお嬢を避けてやるが、大の男一人を抱えた身ではそう俊敏な動きができるはずがない。
ホストが医師の背中でなんとか身を捩り、辛うじて一発目をよけた。
「いったぁ!」
「なんで避けるの!男なら受けなさい!」
「いや、今のホストには無理だがら!」
「心配したじゃねぇかバカヤロー!」
「お嬢!口調!いやだ!怖い待って!」
「お前ら、なにやってんの?」
三人が往来の真ん中で騒いでいると、騒ぎを見ていた野次馬の中から一人の男が声をかけた。

「俺の出番なんか少なくね?ほんのり俺のこと忘れてた?ねぇねぇ?」
男は、長身に長髪、黄色いエプロン姿の保育士だった。
「いーじゃねぇか、お前の初登場は一話丸々だったんだから」
「いやいや、俺だってこんな小説でも出演したいのよ?」
保育士と医師がどうでもいい話していると、医師の背中にいたホストがぽつりと呟いた。
「…ねぇイッシーさん、花畑が見える。休みたい」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ