でこ小説

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「危なくないわけないだろー」
こんばんはー、と店内に入ってきた背の高い男に、一人の子どもがぶつかってしまった。
男は慣れたようにぶつかってしまった子どもを抱き止めて離してやる。
肩上まである髪を無造作に束ねた男はアップリケのついた黄色いエプロンしていた。
「保育士さん!」
学新はその男の姿に心底ほっとした。

ずいぶんとだるげ顔をしている男は「夜間・若葉保育所」の保育士だ。
「あー、この人はやる気がないんじゃなくて、単に行き過ぎた子ども好きなだけなんです。子どもを見るとつい全力で顔が緩んじゃう病気持ちなんです。だから気にしないで下さい」
「おいおい。それじゃ、まるで俺がロリコンかショタコンみたいじゃね?」
「え?違うんですか?」
「否定はしねぇな」
「いや!しろよ!」
学新と保育士が話している少しの間にもせんせー、がくしーんと子ども達はべたべたくっついてくる。
学新はそんな子ども達に辟易としているが保育士は至って普通に
「おぅ、明日香。今日も可愛いな」
と、右足にくっついてきたウサギの髪止めをした女の子の髪を撫でている。
「つーか今度のあだ名はガクシンなんだ?」
「駄菓子屋さんが、学生アルバイトの新聞屋さんの略だって言ってました」
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