でこ小説

□チョコレート
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何て言おうか、どう言おうか、迷いながらお嬢は夜空を見上げいた。
今夜は、月が美しい。もし今、この人工的なネオンの只中になければ、月光の明るさに辟易していたところだろう。ちょうど月に隠れる星々のように。

「お嬢」
「なぁに?」

コンクリート建築の建物が並ぶ歓楽街の末端。木造建築のぼろ屋で、お嬢は艶やかな赤いドレスを纏って、ぼろ屋の主である駄菓子屋と縁側に佇んでいた。和造りのぼろ屋にはなんとも不似合いな豪奢な格好だ。たまには、駄菓子屋にも見習ってほしい。

「作者がまたなんか言ってるわよ?」
「作者はどうでもいいべ。お嬢、寒くねぇの?」
「うん」

今は暦の上で一年で一番寒い時期なのに、お嬢のドレスは薄そうに見えた。寒がりの駄菓子屋には出来ない格好。ちなみにそんな駄菓子屋は、しっかり半纏を着込んでいる。大柄で色とりどりの蝶があしらわれたなんとも派手な半纏だ。
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