でこ小説

□まんじゅうの話
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まだ、ぴかぴかの太陽が昇っている午後。
「おはようございまーす」
沢山のコンクリートの立派な建物が並ぶその末端、木造建築の小さなぼろ屋の表に面したガラス戸を開けてる一人の青年がいた。
「駄菓子屋さん、学新です。入りますよー」
ごく普通の何の記憶にも残らないような顔立ちをしたその青年は学新だった。
「普通ならまだしも、記憶に残らないとは失礼なっ!」
何なの僕の扱い方、と文句を言いながら学新はぼろ屋の商店スペースと居間を抜け、奥の寝室を開け。
「なっ…なにこれ?」
開けたまま固まった。
なぜなら寝室には真っ白で大きなまんじゅうが、ででんっと鎮座していたからである。

「なんだろう…?」
学新は試しにまんじゅうのつついてみた。
表面はもこもことしていて柔らい。
「ん?…ぎゃあっ!?」
学新がまんじゅうを掴もうとした瞬間、中になにか入っているのか、まんじゅうがもぞもぞと動いた。
「えほっ…ごほっ…」
続いてまんじゅうから、こもった咳。
「え?」
どこかで聞きなれた咳に学新は思案顔になる。
「げへっ!…む」
咳はしばらく続いた。
そして。
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