思い出す笑顔

□頼り、だけじゃダメなんだ
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「鬼道!今日も頼りにしてるぞ。」
そう俺に声をかけたのは源田幸次郎。
その大きながたいから、KOGと呼ばれている
学園内で、1番の人気者。
そんな彼に頼りにされている…というのは嬉しいことだ。
だが。反面。悲しい気もする。
もっと身近に感じたい。彼を自分のものだけにしたい。
と、変な好意を寄せている俺にとって、遠目で見られるのは、凄く悲しいことだった。
…悔しい…の間違いだろうか。
佐久間次郎。FW。
彼は最も源田に近い人間。
悔しい。憎い。
我ながら情けないとは思うが、どうしてもその思いは消えなくて。
近づきたい。
ただでさえ試合では遠いのに。
こんなの、酷すぎる。
ベンチで、休養タイム。
俺が指示を出すその斜め後ろでは。
彼が静かに微笑んでて。
その顔を見るたびに身体と心が回復する。
「源田先輩って優しいッスよねー」
「あぁ。そう思う気も分かるな。確かに源田良い奴だし」
「うっわぁ。源田可哀想に、こんなデコに好かれる何て」
「…分かった。もう良い。それ以上言うな佐久間。俺凄い気にしてんだからそれ。」
毎日のように出るこの会話。
源田は皆に優しいから。
皆に同じ目を向けるから。
だからこんな思いをする。
俺だけを見てくれ。お前のその温かい目を、俺だけに向けてくれ。
そんな願いを胸にしまって、今日も俺は舞台へ立つ。
そして彼はまた、冒頭の言葉を俺に架ける。


気づいてくれ。『頼り』だけじゃ駄目なんだ

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