思い出す笑顔
□もう一度笑顔で
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「円堂。どうしたんだ?そんな嬉しそうな顔して」
「ん〜?そんな顔してるかぁ?」
「見れば分かる。何年の付き合いだと思ってんだ?」
「ははっそうだよな〜・」
円堂と俺は、ガキの頃から今この成人後まで。
ずっと一緒に道を歩んできた。
ずっと隣で。誰よりも一番近い場所で。
世界で一番円堂のことを愛して
「実は、さ///」
急に口ごもる円堂。
何でそんな顔するんだ?俺は疑問でいっぱいだった。
「俺、夏未と付き合ってたんだ」
「え?」
いつからそんなッ?!
俺何も知らないぞ
―――…ん?
なんで「だった」、なんて過去形なんだ?
「どうしたんだ!?別れたのか!?」
「っちっがうよぉ〜もう風丸は鈍感なんだから。そんなことになったら俺
泣きじゃくってるって(笑」
「じゃあなんなんだ」
まさか、喧嘩でもしたのか?ショックすぎてワザと元気に振りまってるとか…
「だー///ッ!!だから!俺結婚するのッ!!」
「え?」
本日二回目の「え?」だった。
円堂が結婚?
まぁそんな年なんだろうけど…
...
なんで。何で俺は何も知らなかったんだろう
俺が知ろうとしなかったから?
俺が今の立場に満足しすぎていたから?
へへっ。と、頬を染めながら云う円堂は何か別人のようで
俺の知っている円堂じゃなかった。
あんなに近くにいると思ったのに。
すごく遠く感じて。
実際はこんなにも距離がないのに。
本当は凄く遠かったんだ。
「風丸?おーい。なにぼけっとしてんだよっ」
円堂が下からこちらをのぞきこんできた。
ほら、今もこんなに近いのに。
まるで薄っぺらいのにとても頑丈な壁が俺たちの間にあるようで。
いけない。
なんだか胸が苦しい。
「円堂。おめでと...う」
それは
今の俺の精一杯の笑顔だった。