箱の中の奇跡

□甘い甘い恋の詩
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それは周りから見れば、とても不思議な光景だった。
「なんで付いてくんだよ」
「ついていってる覚えもないね」

1中2中の番長ズが肩を並べて歩いているのだ。
正直俺自身信じられないね。

「たまたま行くところが同じだっただけじゃない」
「それがむかつくんだ!!」

逆切れされても困るんだけど。

「目的地変えればいいじゃない」
「なんで俺が」
「勝手に嫌がってるのはそっちでしょ」

今のセリフに何か手違いがあったのか。
郷田はぱっと顔を背けた。

(ったく..俺もすたったもんだ)

つい最近まで最悪に嫌っていたやつを
今度は好きになるなんて。

できれば信じたくもない。
しかし気づいたらもう遅かった。
意識した途端にますます惚れていくのだ。
(不思議なものだよね)

と、ある程度歩み進んだところで、ぱた。と
足音が止まる。

そのタイミングは郷田と俺と、ばっちり重なっていて、思わず吹き出しそうだった。

「なんでお前まで止まるんだよ」
「ここに用があるから…じゃないの?」

止まったのは大通り裏にあるちーさなカフェだった。
ここは人通りが少なく、前から目を付けていたところだった。
週に何度か通いつめ、もうここの店長とは何度顔合わせしたか数えられないくらいだった。

「あらお二人とも!
知り合いだったんだねぇ!!ハンゾウくんにダイキくん!」

調子のいい声でその店長は俺たちを見つけると大げさに手を振ってきた。

「ささ。入って。新メニューを考えたんだ!
ぜひ味見して欲しくて」

そそくさと俺たちの背中をおして店の中へと誘導させる。
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