キセキの物語 ブック
□2夜
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どれくらい歩いただろうか。
生まれ育った村で地形もバッチリだと思っていたはずなのに、全く景色も変わらずさ迷い続けている。
『……あの、戒宮…さん』
「何だ?…私のことは茜でいい。苗字は好まないのでな。あと敬語もやめろ」
俺の顔を横目で見る彼女は淡々に話す。
俺は苦笑するしかなく、小さく「はい」と言った。
そして続けて
『……あの、どこに向かって、いるんだ?』
俺はどちらかと言うと、人とコミュニケーションをとるのが苦手で正直何を話していいか分からない。
でも、何処に向かっているのかとても気になった。
茜は左手を顎に持っていき、考える仕草をする。
そして妖しく、にやりと笑う。
「殺しあい…かな」
そう言った途端に俺の背筋は凍りつき、言葉が出なかった。
逆に茜は涼しい顔で言い放った。
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