番外編
□甘やかしたいっ!
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「ほら、満、髪濡れたままだぞ?」
「あっ、林太郎、大丈夫だってば…」
今日も今日とて同室者の世話を焼く。
同室者、鈴野満。
第一印象は小さい奴、で、人見知りすんのか知らないけどめちゃくちゃ口数が少なかった。
でも時が経つにつれて懐いてきた。なんか、野良猫を手なずけた気分だ。
満は自分のことに無頓着だった。
絵を描いてる時が一番なのか、一年の時には俺が寝る前から起きた時まで小さな明かりの下でずっと描いてることもあった。
そんな奴が一緒なんて嫌でも世話焼きになるだろ。
今だって大浴場から部屋に戻ってきたと思ったら髪がびしょびしょのままだ。
ベッドに座りその前に満を引っ張って座らせタオルを頭にかぶせてガシガシと拭いてやる。
「何が大丈夫なんだよ、風邪ひくぞ?」
「で、でも…」
「でもじゃない。大人しくしてろって」
強めに言うとごめん、と小さく呟いて大人しくなる。
何がごめん、だよ。俺がやらないで誰がお前の世話見るんだ?と思ったが言うのも恥ずかしかったので黙っていると、満の体から力が抜けてるのがわかった。
「満?」
「なに?」
「…眠いんだろ?」
「…ん」
満の前髪を後ろにもっていき顔を覗きこめばすでに目をつぶってうとうとしていた。
一年の時には、顔を見せるのも嫌がったな。今では全然平気だけど。
でもそれは俺にだけだ。
ほんの少しだけ、優越感を感じてるなんて言えるわけない。
「りんー」
「何ー」
「ありがと、もー寝よう?」
「一緒に?」
「んー…」
っと、もう本気で寝そうだ。
のそのそと俺のベットに寝転んだ満を見て電気を消す。俺も隣に寝転ぶ。
「お休み」
「…み…」
…みって…。
乾かした髪を撫でてやれば気持ちいいのかすり寄ってくる。
ホント、猫みたいだ。
俺がここまですんの、満だけだってちゃんとわかってんのか?
考えても仕方ないか、と満にもちゃんと布団をかけてやり眠る。
男二人でシングルベッドは狭いはずなのに、満が小さいせいかなんなのか、狭く感じることはなかった。
甘やかしたいっ!
(小さな体を抱きしめてしまえば、ほら、)
(特別、って知ってるか?)