白いキャンバスに描く

□保護者な男
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総長と言われる人と歩いているということに緊張しながら食堂に入る。
と、一瞬ザワとしてから静かになった。

…良平くんが、いるから、かな…
なんか、見られてる…?

人からの視線に堪えられなくなって、林太郎の後ろに隠れるように少し下がる。



「…チッ…」



すると、良平くんの方から舌打ちが聞こえた。
それだけでもビクリとしてしまったのに、遅れて聞こえてきた地を這うような声に体が跳ねた。



「…見てんじゃねーぞクソが」



食堂内の空気が痛い。
皆すぐに視線を外した。
しばらくするとまた騒がしくなってきた。



「みつる」



先程とは打って変わって優しい声音に安堵する。
だけどほとんど無意識的に林太郎の服をギュと握ってしまった。

…う、眉間に…シワ…

前髪のおかげで、良平くんには見えていないだろうけど(ありがたい)、今僕は泣きそうな顔してる。絶対。



「みつる、ご飯食べよ」
「だなー。腹減ったし」
「う、うん…」



良平くんは、僕の林太郎の服を握っていた方の手を掴んで、ずんずん進んでいく。



「あ、林太郎っ」
「っと、待てよ二人とも!」



林太郎の名前を呼んだとき、腕が少し痛んだのは、気のせいなんかじゃないはず。



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