白いキャンバスに描く

□保護者な男
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着替え終わって手持ち無沙汰になった僕は、パラとスケッチブックをめくる。
今日出会った、彼を思い出しながら。
こんな絵を、綺麗だって、上手いって言ってくれた。
自然と、微笑んでしまう。



―ピンポーン



備え付けてあるチャイムがなる。
誰だろ…?
林太郎は鍵持ってるだろうし、いちいちチャイムを押したりしない。



「はい…」


―ガチャ



林太郎の友達とかかな…
そう思いながらドアを開ける。



「あっ」



目の前にいたのは、さっき別れたばかりの良平くん。



「みつる、飯、食い行こ」
「!、ぼ、僕とで、いいの…?」
「みつるがいい」



言われて真っ赤になるのがわかる。熱い…
他意はないんだろうけど、すっごい殺し文句だ。

すっ、と、辺りが明るくなった。



「ゃっ…何っ…?」



良平くんが僕の前髪をかきあげている。
依然として僕の顔は赤いままだ。
顔を見られるのが嫌で俯く。
こんな顔、見られるなんて…

一瞬、見えた良平くんはやっぱりかっこよかった。
同じ人間なのに、どうしてこんなに違うんだろう…



「みつる」
「…良平く、…手…」



放してほしいの意をこめて恐る恐る良平くんを見上げる。
身長差のせいで上目使いになってしまう。



「………」
「…」



じぃと音がするぐらいに見つめられて、目は反らすにも反らせない。


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