恐怖、ときどき恋

□どきどきっ!
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「あ!ママ!」



なんだか微妙な空気を破ったのは男の子の声。
お母さんを見つけたのか嬉しそうに浅木勇気の上ではしゃぐ。
うん、やっぱ可愛い。



「こうくんっ!!」



人込みから女の人が走ってきた。
この人がお母さんなんだろう。
浅木勇気は男の子を降ろすと、また頭を撫でてあげていた。



「こうくん、離れちゃダメって言ったでしょう?すみません、ご迷惑をおかけしました」

「あっ、いえっ!大丈夫ですよ!」



間近で見ると綺麗な人だった。とても子供がいるようには見えない。
そんな人が丁寧にお辞儀をしながら謝ってきた。
なんでも許したくなるな、これは。



「ママ!ぼくたいやき食べたよ!」

「え?たいやき?」

「あ、カスタードのタイヤキ、あげちゃったんですけど、大丈夫でしたか?」

「す、すみません!お金、お金払います!」

「いや、俺が勝手にしたことだからいいですよ」

「本当に、ありがとうございます。ほら、こうくんはお礼した?」

「まだ!にぃちゃ、ありあとう!」

「うん、どういたしまして」



浅木勇気から離れて女の人の足にしがみついた男の子の頭を撫でてやる。

それから二言三言話して(挨拶だけど)、親子は改札口を通っていった。
俺も帰るかなー。
って、まだタイヤキ食ってないや。

そんな事を思っていたら、頭に暖かいものが。
……えーと、何してんだ浅木勇気。



「…何?」

「さすが、優しいな、センパイ」

「普通じゃね?それよりありがとな、タイヤキ」

「いい。拓実、電車いいのか?」

「ああ!」



電車!
俺が乗る方向に向かう電車の発車時刻は後1分ほど。
もう来てるかも!!
どうりで人が増えたと思った!!



「そ、それじゃあ俺は帰るけど…?」

「おう。また明日な」

「うん、また明日…?」



なんか引っ掛かる…。
なんだっけ??
まぁいい、とりあえず電車!!




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