恐怖、ときどき恋

□どきどきっ!
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「美味しい?」

「ん!おいひい!」

「そか!」



可愛い笑顔に俺も自然と笑顔になる。
あー、いいなぁ子供。
ふひひ、と眺めていたら男の子の頭に大きな手が乗っかった。
その手はもちろん浅木勇気のモノで、男の子の頭を無遠慮に、でも優しく撫でた。



「ひゃあっ」

「坊主、かぁちゃん捜さないとな」

「ん、ママ、捜す」



驚いた。
まさか浅木勇気がそんな事を言い出すなんて。
そして男の子の肝の据わり方に。
俺がこの子なら泣くね!
浅木勇気怖いから!
怖がりもせず、大人しく頷く男の子に感心して、少し自分が恥ずかしくなった。
俺はどんだけチキンですか…



「拓実」

「ぅへっ?!」

「やるよ」

「え?」



ほい、と渡されたのは口のつけられてないタイヤキ。
え、何、くれんの?
そりゃあ男の子にあげちゃったからちょっと残念とは思ってたけど、そこまで欲しいわけじゃ…

そう言おうと決心してから浅木勇気を見遣ると既に男の子を肩車しているところだった。
男の子はキャッキャッと楽しそうにしている。

…なんだか歳の離れた兄弟みてぇ…

そう思ってまた、笑う。



「何笑ってんだよ」

「すみませんっしたぁ!!」



…あれだよ、反射だから。
仕方ないだろ目ェ細められちゃ謝るっきゃないんです!
目、細める…?
あれ、今浅木勇気、笑った?
さっきとは違う大人びた笑顔。
ぽけ、と魅入ってしまう。
…美形って得だよな。
ああ俺今日何回こんなこと思ったんだろ。

溜め息をつきそうになって手の中にあるタイヤキを思い出す。
貰ったのにお礼もなんもしてないな…
それは良くない。
母さんに"礼儀はキチンと!"と言われて育った俺はお礼を言っていない事に焦った。
お礼言う他に、何か…

………………あ。



「勇気くん、タイヤキ、ありがとう。半分もらうな?勇気くんも半分食べろよ」



調度真ん中から割れた。
よしよしと思って浅木勇気に差し出す。
浅木勇気は目を見開いた後、それを受け取った。
なんだか耳あたりが赤くなってたけど、気のせいか?




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