恐怖、ときどき恋

□どきどきっ!
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「ご、ごめん」



もう謝るのは反射になってる気がする。
てかそろそろ手を退かして欲しい。



「ちっ…。…とにかく、あんまビビんなよ。殴ったりしねぇから」



舌打ちにビクリと肩を震わせてしまった。
え、殴らないの?と若干気分が浮上したところで手を退かされた。
…なんでそんな顔してんだよ?

いきなり目に入ってきた光に目を細めながらも、見えた浅木勇気は少しだけ寂しそうな顔をしていた。
どうすれば、と戸惑っていると、行くぞ。と声をかけられ、浅木勇気は歩き出した。
俺も慌て後を追うが、なかなか先程の顔が頭から離れない。



「センパイ、携帯」

「え?」

「メアド、教えて」

「あ、うん」



殴らないと言われてから、少しだけ恐怖心が薄れた気がする。
そしてメアドを聞かれて思った。
浅木勇気はただ年上の友達が欲しいだけなのではないか、と。

そうか。
それなら可愛い(見た目は可愛いとは掛け離れているが)後輩の為と思って友達になってやらないとな!!

なんて、いささか上から目線で納得する。
その間に登録は終わったようだ。



「ん。じゃ、夜電話するわ」

「……へ」

「出ろよ?」



ニヤリと笑われて必死で頷く。
誰だ先輩らしく振る舞おうとしてた奴は?!
だってさ、怖いんです。
恐怖心が薄れたとはいえ目の前の相手は浅木様と呼ばれる不良様だ。
下手な事できねーから!

それにしても、付き合えと言ったわりにはどこかに連れてく気はなさそうだな…
普通に駅に行く道だ。



「あっ」



駅前の広場に着いた途端に俺は声を上げた。
半歩前に歩いていた浅木勇気が不思議そうに振り向く。



「どうしたよ?」

「…勇気くん、甘いのって平気か?」

「普通だけど」

「そ、そっか!」



俺の視線の先にはタイヤキ屋さん。
最近出来たばかりで、俺もまだそこで買ったことはない。

ここが先輩としての見せ所じゃね?!
と、高校に入ってから先輩面した事のなかった俺はテンションが上がる。



「じゃ、タイヤキ食わねー?奢るよ」

「は?」



っすみませんんんん!
は?って言われたよ。は?って。
うわぁ、やべ、調子乗ったか俺…
そうだよな、天下の浅木様にタイヤキなんて失礼か…



「い、嫌ならいいんだ!」

「…嫌じゃねぇよ。俺が奢る」

「え?!はっ?!いや、俺が奢るから!!」



浅木様に奢らせるなんて滅相もない!




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