ぉりじ
□人に必要なモノ
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目を閉じて
呼吸の音を聞く
感触を確かめるように
肩を抱く
自分が生きている事を確認するように
この暗闇にのまれないように
おそらく
この世界を生きる為には―「広瀬」
「………」
「またそんな本読んでんのか」
「…おもしろいよ」
「これの、ねぇ、詩集だろ?」
「そう」
「うわ、表紙まで真っ暗じゃん」
「『生きているのか死んでいるのか分からない』」
「?」
「『そう思うとき、その人は独りなのだ』」
「それって、本の?」
「そ」
「やっぱ暗いな。よく分かんないし」
「…そうかな…。俺は分かるけど」
「マジ?じゃ、解説してよ」
「『暗闇にのまれた時、独りでは、何もできない』………つまり、人間は一人じゃ生きられないって事だ」
「そうかぁ?一人でも生きられんじゃん」
「…そう思うのか?」
「つーか広瀬一人暮らしだろ?」
「……そういう"一人"じゃない」
「はぁー?」
「人間は他人を求めずにはいられない。もし、この世界で一人きりになってみろ。そんな孤独に、堪えられるか?」
「……………ムリ」
「だろう?」
「つかさ、広瀬がいなくなるとかゆーの堪えらんねーや」
「……同感だな」
「お、めっずらしく素直じゃん」
「…たまにはいいだろう」
「へへっ、もう俺、お前なしじゃ生きられねーし」
「…ああ、……俺もだ」
目を閉じて
呼吸の音を聞く
感触を確かめるように
肩を抱く
自分が生きている事を確認するように
この暗闇にのまれないように
おそらく
この世界を生きる為には
"貴方"が必要なのだ
「……帰るか」
「おう!」
END