白いキャンバスに描く
□いない神に願うのは
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「あれ、総長こんなとこにいていいのー?」
軽い口調でニヤニヤと笑う篠宮に対し、ソファから気怠い視線を投げかける滝川。
滝川は満を自分の部屋に残し、チームの溜まり場で時間を潰していた。
「鈴のん、置いてきて良かったのか?」
少しだけトーンを落として篠宮が尋ねる。夜が明けたばかりで、騒がしかった部屋の外も今は静まり返っている。もうバーは閉店したのだろう。
「俺といる方が危ねぇだろ」
抑揚のない声で呟いた。滝川は疲れたというように目を閉じる。まるですべてを拒絶するように。
「それはどーかなぁ…。鈴のん、どうしてるかなー」
「…何が言いたい」
「敵が外ばっかにいるとは限んないってことだっつの。滝川財閥のご子息がそんな甘ちゃんでいいのかって話」
「…」
「無言で圧力かけんなよー。」
ゆったりとした動作で滝川の隣のソファに座り、携帯を掲げた。
「お前が離れても、関わった事実は取り消せねぇよ。滝川の名が邪魔するのだってわかってたはずだろ?見落とすな、それが大事ならなおさらな」
「誰だ」
「気流コーポレーション。聞いたことあるだろ?お前んとこが買収した会社だよ」
「…桐生…とか言ったな、そこの社長」
「んで!心当たり、ないわけ?」
言われ思考を巡らした滝川が眉を寄せる。
それから睨むように篠宮を見ると口を開いた。
「何を考えている」
「べっつにー?俺は楽しめればそれでいいだけー」
「…ちっ」
乱暴に立ち上がり扉へと向かう。
「今度ホノルル作ってくれりゃーいいからなー」
「ノックアウト作ってやるよ」
「あっは、どういう意味だコラ」
篠宮は滝川から、抑えきれていない殺気を感じほくそ笑む。
「さーって、ゲームスタートだな」
静かな空間に、響いた。