白いキャンバスに描く

□初恋以上に甘酸っぱい
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お気に入りの曲が遠くで聞こえて音の出どころを探す。
案外近くにあったそれを消して起き上がる。
林太郎は、もう行ったみたいだ。

顔を洗って制服を着替えて朝ごはんを食べに行く。
食堂に入ったとたん向けられる視線…
なんで…?

突き刺すような視線に耐えながら空いている席を探して腰をおろす。
朝はパンかご飯か選べる。僕はパンにした。
いつもより重苦しい空気に包まれながら食べたパンは、いつもより味がしなかった気がする。

部屋に戻って支度していると、ピンポーンとチャイムが鳴る。
きっと良平くんだろうからバッグを持って出る。もちろんスケッチブックも忘れない。



「おはよ」
「お、おはよう!」



ドアを開ければ少し眠たげな良平くんがいた。
行こうと促されて少し後ろをついていく。
だって、皆、見てる、し。総長さん、だし。

僕なんかが、隣を歩いていい人じゃ、ない。



「みつる」
「え?わっ!」



うつむいていた顔をあげると腕を引っ張られた。
気づけば、僕の隣に、彼がいる。



「ここにいて」
「う、うん」



なにが何だか分からずに歩いてく。
掴まれた腕から、熱が引かない。
どうして、こんなこと今まで一度も感じたことなかったのに。
どうして、こんなに胸が苦しいんだろう。

人並みに恋をしてきたつもりだった。
もちろん全部男の人にだったし告げた事はなかったけど。
それでも、ここまで恋い焦がれたことはなかったはずだ。

なんだか自分で自分をコントロールできていない気がして、怖い気もする。

けど、そんなことを考える余裕がなくなるぐらい、良平くんの隣にいることが幸せだった。




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