恐怖、ときどき恋

□どきどきっ!
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ああ……
放課後んなっちゃったじゃん。

て、事で今俺は一人寂しく掃除中だ。
それにしても、高井の奴さっさと部活行きやがってちくしょう。

光は残ってくれてたけど、白百合が来たから帰ってもらった。
二人を待たすのは悪いからな。


にしても、暖かくなったよなぁ…
もう5月だもんな、花見してないや。
やりたかったなぁ…
来年はぜってーやろ。高井とか黒沢とか白百合誘ってー



「おい!」

「ぅおっ?!」



のほほんと桜の事を考えていると目の前に真っ赤な壁が。
いやいや、Tシャツだわコレ。



「う、あ、アカギさ…くん」



さすがに様づけはどーかと思う。
なんてーか、年上のプライド?みたいなもんだよ。
ああ君付けだけどな!
呼び捨てとか無理ですけど何か?



「は?アカギって誰だし」

「え、っあ!浅木くん!」



しまったぁぁあああ!!
そうか!そうだよな、浅木勇気様ですよね!!
しょうがないんだよ最初の認識がアカギだったんだから!!


―ドンッ!


なんて思考に耽っていると耳元で凄い音が聞こえた。

っ…ぇえええ?!
う、う、腕!!
何何何がしたいんだコイツ!

右に視線を流せばつい2ヶ月前までは中学生だったとは思えないようなたくましい腕が。
どうやら浅木様が俺の後ろの壁を殴ったらしいですよ。
なあ、マジ、無理!



「なっ…なっ…」

「浅木、勇気だ。勇気って呼べよ。柳本拓実先輩?」



顔面蒼白な俺が見たのは、イラついたように眉間に皺を寄せこちらを見据える浅木勇気。
ああ…
意識飛ばせない自分が憎い。



「…帰るぞ」

「ぇ、あ、はい!」



いつの間にか浅木は俺から離れてて、ドアに寄り掛かっている。
帰るのか、そうか、付き合って。は、もういいみたいだな。良かった。早く帰ってくれ!



……ちょ、なんでこっち見てるんだよぉぉおお?!?!
帰りなよ!!じゃないと俺が帰れないから!!



「拓実ぃ…」

「う、え?」

「早く帰んぞ」

「お、俺も…?」

「はぁ?ったり前だろが」

「!す、すみません!今用意…」



俺が動き出すより先に、俺の手からほうきを奪い取り(普通に取ったんじゃい、あれは奪い取られたんだ)用具箱に投げ入れる。



「…あ、りが、と」

「おう。じゃ行くか」



奪い取られたとはいえ、しまってくれた事に変わりはないのでお礼はする。
すると、今まで見たことないような顔で笑われた。
人を馬鹿にしたような笑いとかじゃなくて、こう、なんか爽やかな…



…男前って羨ましいな、おい。
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