声を届けて
□第5話
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何故この騒ぎにユキノたちが選ばれたのか…
その理由を聞くため、ユキノたちは『Blue Cats』に戻ってきた。
「5年前の飛行機事故は知っているな」
「はい」
5年前世界でも優秀な科学者が一堂に会するサミット『ネオテクノロジーサミット』が行われるはずだった。
だが科学者たちを乗せた飛行機は墜落したとされていた。
乗客は全員死亡、ニュースでは連日放送されていた…はずだった。
拓也の話によれば科学者たちは飛行機事故と称して科学者たちを誘拐したのだ。
「じゃああの飛行機事故は…」
「奴らの仕組んだ計画だ。山野博士は攫われたんだ、イノベーターの手に」
「つまりバンの父さんは生きていると?」
「そうだ」
ユキノはバンに目を向けた。当のバンは酷く戸惑ったような顔をしていた。
「何だよ、イノベーターって?」
「勢力を拡大している謎の組織、今回の総理暗殺を計画したのもイノベーターだ」
ユキノは『イノベーター』と言う単語を聞いた途端拳を強く握った。
「奴らの真の狙いはもっと大きく、深い、そのために君のお父さんの頭脳が必要だったんだ」
「真の…狙い?」
拓也の真の狙い、と言う言葉にユキノはぴくっと反応した。
「エターナルサイクラ―の開発」
「エターナルサイクラー?」
聞きなれない言葉に四人は首を傾げた。
「エネルギーを限りなく生み出す完全な無限稼働機関だ、世界中のエネルギー問題をすべて解決することが出来る
山野博士はその理想を信じ一度は奴らへの協力を承諾した、だが、エターナルサイクラ―は使い方を誤れば世界を滅ぼす兵器にもなりうる物なんだ」
エターナルサイクラー…人類の希望と絶望が詰まった諸刃の剣。
ユキノは以前、偶然にもその存在を知った。亡き両親の遺品…彼女の両親真白夫妻の遺品の中にエターナルサイクラーに関する論文があったのだ。
幼かったユキノには難しい事がずらずらと書いてあったがその危険性が拓也の話からようやく分かったのだ。
イノベーターを調べればもしかしたら両親の死の謎を解き明かせるかもしれない。だが、それは同時に既に巻き込まれているバン、アミ、カズをもっと危険な目に合わせることになるかもしれないのだ。
ユキノは心の中で葛藤していた。
そんな中、話は続いていく
山野博士はイノベーターの計画に気づき逃走を試みるが失敗。何とかデータだけでもとエターナルサイクラーにデータの入ったプラチナカプセルをLBXに隠し助手に持たせたと言う。
すなわち…
「アキレスはこれからも狙われる…」
ユキノの呟きに拓也は小さく頷いた。
「そのとおりだ、カプセルを強引に取り出そうとするとデスロックシステムが起動、取り出そうとした者の命を奪い、同時に内部データを消滅させる仕組みになっている」
「すなわちプラチナカプセルを取り出すためにはデスロックシステムがoffになっているバトルでアキレスを破壊するしかない」
「君が狙われたのはそういう理由だ」
檜山や拓也は淡々と言うが子供にとっては重い話。自分たちが知らぬ間にそんな危険な事に巻き込まれていたという衝撃は大きいだろう。
「俺達、そんなことに巻き込まれてたのかよ…」
「ハンターもおそらくアキレスをサポートするために博士が開発した機体だ」
拓也はハンターに視線を落としすぐに向き直った。
「これからも連中はプラチナカプセルを狙って君にバトルを挑んでくるだろう、だが、今後は俺達は俺たちがフォローする、困ったことが有ればいつでも相談してくれ」
俯いていたバンは重い口を開いた。
「あの、父さんは今どこに…?」
拓也は一瞬戸惑った表情を見せたがそれを誤魔化すように檜山が代弁した。
「すまない、そこまでは分かってないんだ」
「そうですか…」
バンは落ち込んだ表情を浮かべた。
「奴らには山野博士の頭脳が必要だ、脱走を図ったとはいえむやみに危害を加えたりしないだろう」
「バン君、必ず俺たちが居場所を突き止めてみせる、だから、くれぐれも軽率な真似はするなよ」
「政府や警察だけじゃない、イノベーターの力はこの世界のあらゆる所に及んでいるかな」
拓也と檜山は四人に対し、念を押すように言った。四人は頷いたがただ一人、アミは二人に対し疑いを含んだ目を向けていた。
「もう遅い、家の人が心配するから帰りなさい」
「はい」
「ユキノ、顔色悪いわよ?大丈夫?」
「ちょっと辛いかな…皆先に帰ってて」
「あ、あぁ…」
いつもとは明らかに違う様子のユキノを他の三人は心配しながらも仕方なく店を出た。