声を届けて

□第4話
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カズのLBX探しのためにキタジマに行けば入口の所でバン達とスーツを着た若い男性が話していた。なんでも見せたい物がある、と勧誘されているらしい。

「知らない人について行っちゃいけませーん」

「!、ユキノ」

「面白そうな話してるね、私にも見せてよ、宇崎拓也さん?」

宇崎拓也、タイニーオービット社の開発部部長
顔を見ただけで分かるくらい私の中では有名人だ。

「真白ユキノか、ちょうどいい、君も来たまえ」

「…はーい」

くそ…何か嫌な感じだな…


連れて来られたのはカフェ『Blue Cats』
中に入ればこじんまりしていてその店のマスターと思われる男性が一人いた。
彼は私たち一人一人に飲み物を出してくれた。

「どうぞ」

「ありがとうございます、えっと…」

「この店のマスターをしている檜山だ」

檜山さんはバンにアキレスを見せてくれ、と言った。
彼はアキレスを手に取り見ただけでカスタマイズや機体のバランスなどを言い当てた。単純にすごいと思う。

「カスタマイズはユキノがしてくれるんだ!!」

「うん、なかなかの腕だ」

「ありがとうございます」

店の奥から箱を持って現れた拓也さんはそれを私たちの前に置いた。

「君たちに見せたい物というのはこれだ。」

『LBXハンター』
凛々しい狼のようなワイルドフレームのLBX。タイニーオービット製で手に装備されているライフルがとてもかっこいい機体で私はアキレスの時の如く目をキラキラさせていた。

「すげぇ…このLBX…」

「うんうん!!パーツも装備もよくバランスがとれてる!!」

おそらく無意識に口から出たであろうカズの言葉に反応した拓也さんが「組み立ててみるか?」と切り出した。

「いいの!?」

「えっ!?カズズルい!!」

「譲ってあげなさいよユキノ」

アミに宥められバンに頭を撫でられてしまえば引き下がるしかなかった。


「やっぱりカッコイイよー…」

完成品を見ていればやはりビジョンがかかっているのか周りに花が咲いているように見えた。

「君たちに来てもらったのは単にこのLBXを見てもらうためではない、これから話すことは他言無用で頼む」

拓也さんと檜山さんの雰囲気が重いものに変わった。

「新しい総理大臣の就任記念パレードがあるのは知っているな。」

「財前宗助だっけ?」

そうカズが言えばバンはキョトンッとしていた。おそらく総理の名前を知らなかったのだろうと思う。

「それがなにか?」

「財前総理の命が明日のパレードで狙われている、ある組織によって」

「それって大変じゃない!」

「俺達はそれを阻止したい、そのためには君たちの力が必要なんだ」

子ども組が驚いたのも無理はない。

「あの…拓也さん達って警察の人?」

「警察がこんな所でカフェ開いてたら世の中終わりだね」

「彼女の言うとおり俺たちは警察ではない」

「じゃあ俺達より警察に頼んだ方が…」

「残念だが警察に頼んで安心できる状況ではない」

「それって尚更私たちじゃ…」

アミが心配そうに言った。それもそうだ、私たちはまだ中学生なのだ。そんな子達に突然総理の護衛を頼むなど余程の理由があるのだろう。

「君たちでなくては駄目なんだ」

「理由は?」

「総理暗殺にはLBXが使われる」

「何だと!?」

目を見開いて驚いた。確かに昔発売が中止になったLBXだがまさか人殺しに使われるなんて…


「本当だ、LBXに対抗するにはLBXが最もいい、そのためには君たちのような優秀なLBXプレイヤーが必要なんだ」

「…っ」

バンが手を強く握りしめたのが分かった。
LBXが好きなバンにとっては信じがたい事実に困惑しているのだろう。

「非常に危険が伴う任務だ、断られても仕方ないと思うが是非とも君たちに協力してほしい」

「…」

大人の都合、大人の事情、こんな言葉大っ嫌いだ。子供は大人のように権力がないのに大人はそれをいいことに子供を捨て駒のように利用するのだ。実に勝手な人種…

『君は我々の駒なのだ』

「…っ」

首のタトゥーが妙に痛んだ。

「俺、やる!!」

「なっ、バン!!」

「いいのか、危険な任務だぞ」

「うん、でも俺、LBXを使って悪いことをするのは許せないんだ!!だから…」

「バン…」

「私も…やります!!」

「アミまで…」

「バンだけにやらせるわけにはいかないでしょ、友達なんだから」

しっかり決意をしたようなアミの目を見たら同じ女の子なのに強いな…と思った。

「…君は?」

「俺は…ちょっと…だって俺のLBX壊れちゃって今持ってないし…」

檜山さんと拓也さんはお互いに目配せをした。


「協力してくれたらそのハンターを君にあげよう」

「え、これを?」

カズはしばらくハンターを見つめれば小さく笑った。

「うん、なら俺、やってもいいかな」

「お前ら…」

「君はどうする、真白ユキノ」

「やりますよ、仕方ないな…」

少しふてくされながら半ば自棄になり飲み物を飲み干せば三人が「ユキノらしい」と言った。全くどういう意味だ。

「ありがとう、明日の9時、ここに集合してくれ、それとさっきも言った通りこのことは誰にも言わないでくれ勿論家族にもだ、危険を伴うからな話は以上だ明日は頼むな」

「「「はい!」」」

それぞれが鞄を持ち出口に向かったが私はその場に留まった。

「ユキノ?行くわよ?」

「先行ってて。」

バンたちを先に帰し拓也さん達に向き直った。

「一つ、質問していい?」

「何だ」

「この件に海道義光は関係しているよね」

「「!?」」

私の確信付いた問いに二人は酷く動揺していた。

「やっぱり…はぁ…めんどくさいな…」

「ユキノ、やはり君は真白夫妻の…」

「は、大人には関係ないよ」

私の…今は亡き両親を知っている人なのに乱暴な口調になってしまった。

「私は自分のやり方であいつに復讐をする。どんな事が起きても私は奴には屈しない」

心の中では憎悪の感情が渦巻いていた。
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