声を届けて
□第9話
2ページ/4ページ
一面に広がる機材に慌ただしく動き回る制服を来た大人たち、そこはまるで漫画に出てくるような秘密基地のような所だった。
「ようこそ、シーカーへ」
「シー…カー?」
「シーカーとはイノベーターのような組織に対抗するため作ったテロ対策ユニットだ、同じ志を持った仲間が集まり海道義光やイノベーターの野望を阻止するのだ」
「…デパートの下に作っちゃだめでしょ…」
ある意味狙われづらいがアイデアが斬新過ぎやしないか?と私は思った。
後方の扉が開き入ってきたのは見慣れたメンバーだった。
「リュウにミカ…それに郷田三人衆まで…」
「お、アミちゃん」
「皆どうして?」
「こいつらも仲間だ」
後ろから郷田が説明してくれた。大人だらけの真剣な現場にこんなにも子供がいるとは何とも異色の光景だ。
「最近の研究でLBXの操作は大人よりも子供の方が優れている事が分かった、そこで我々は子供たちをシーカーに加えることにしたんだ」
「そ、そんなこと言われても…」
隣にいるカズがいつものへたれを発動させた。確かに12、3歳の子供が背負うには余りにも重い試練だと思うが…
「うだうだ言うなよ」
「ユ、ユキノ…」
「私たちはチームなんだろ?なら安心できんじゃねーの?」
「まぁ…な」
カズも納得したところで私は皆を軽く見渡した。
LBXが大好きな彼らはきっとこれからも危険を顧みずに突っ込んでいくのだろう。私はその中で普通の私でいられるのか、心の中で自問自答を繰り返していた。
「ユキノ、大丈夫よ、何を思ってるのかは分からないけど皆一人じゃないんだから」
「そうだぞ、お前ついさっき人に言っといて自分が思えないなんて無しだからな」
「俺もアミもカズも皆いるんだ、だからユキノは自分ができる事を精一杯やってくれ」
「三人とも…」
バンたちが笑顔で私を見てくれている今更ながら改めて一人じゃないことを実感した。
「…サンキュー」
照れくさそうに俯く私をみて拓也さんをシーカーの全員をこちらに呼んだ。
「皆聞いてくれ。シーカーはここに新たな戦力を手に入れた、山野博士を救出しイノベーターの野望を阻止する日までこの少年たちと一緒に戦おう」
拓也さんの宣誓で一気に心の中に活力が生まれた。だが、それに比例するように心の奥では復讐の鐘の音が高々と鳴り響き始めた。
「ユキノってLBX持ってるのか?」
「ん?さぁ、どうでしょうね」
「でも持ってるからここにいるんだろう?」
「さぁ、どうでしょうね」
「言いなさい、ユキノ!!」
「いくらアミの頼みでも秘密は秘密だよ」
データの解析が終わるまで私たちは待機を言い渡された為、息抜きがてらに雑談を始めていた。
「でも私のクノイチを使った時ありえないくらい強かったわよね?」
「なんの事でしょうか?あ、拓也さん解読まだー?」
アミ達の質問攻めから逃げ出し拓也の元に駆け寄った。後ろで何やら騒いでいるけどここはシカトだ。
「苦労してる感じ?」
「見ての通りだ…頼めるか?」
「…5分頂戴」
里奈さんに席譲ってもらい軽く指慣らしをすればキーボードを打ち始めた。
「すごい…宇崎さん、一体この子は…」
「あぁ…天才としか言えないだろうな」
画面に流れるデータの羅列に目をくまなく凝らしていく。およそ5分後、私はキーボードを叩く手を止めた。
「これでおしまい」
エンターキーをカチッと押せば突如画像が投影された。
「里奈が持ってきた設計図を解読した結果海道邸への潜入はこのグレースヒルズから行う」
「グレースヒルズ?なんでそんな所から…」
「今出てる画像に噴水があるだろ?これが隠し通路になってるんだよ」
どうせ、なにかあったときにすぐ逃げるための逃走ルートだろ、逃走ルートが潜入ルートになるなんて何ともおかしな話だ。
「ラッキー、簡単そうじゃん」
「そうでもないよリュウ」
「ここにも要所に配置された警備員監視カメラ、人感センサー、さらにはいたるところにLBXが配備させ24時間の監視体制が続いているんだ」
「まさに鉄壁か」
「確かに」
カズの呟きに一瞬げんなりとしてしまったが突破口がないわけではなかった。
「でもこれだけ情報があるならグレースヒルズに行ってみましょう!」
「待てよバン」
「今度こそ父さんを助けるんだ!!」
目に見えてバンが焦っているのが分かった。近くまでたどり着いた手がかり。伸ばした手をそう簡単に引っ込める事は出来ないのだろう。
「狙うなら明日の夜がいいわ、明日海道は政府の解剖に行くから警備も手薄くなるはずよ」
里奈さんに説得されバンは悔しそうに押し黙った。
「バンの父親がいる部屋は?」
「おそらくこの部屋」
里奈さんが指さしたのはモニター上に点滅するマーク、ぴこぴこと言う音が変に部屋の中に響いていた。