声を届けて

□第18話
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駅を出るといろんな所からとても可愛らしいメイドさんのこえが聞こえる。
コスプレイヤーもそこら中にいて人気な人なんかだと撮影会の様に人だかりができているところもある。
とうとう来たのだ。ジャパニーズカルチャーの聖地。アキハバラに…。

「これが普通にパーツ見に来る観光ならどれだけよかったか…」

「後にしろ」

同伴してくれているハンゾウの言葉に溜め息を着く。分ってはいるものの仕方ないじゃないか。私はここ数日間愛すべき自機に会っていないのだから。
少しむくれ気味にオタクロスへのヒントを探す。知っている人は多くいても居場所まで知っている人は見つからない。有名な人であるのは確かだが手掛かりがこれと言って見当たらない。私たちは大きく溜め息を着いた。

「大体、広すぎるんだよ、アキハバラ。路地裏言っても大通り歩いても人居すぎて見通し悪いし何より私たちはオタクロスとやらの外見を知らないんだ。出来ることは限られる。」

私の言葉に再び溜め息が零れた。その時だ。突然アキハバラ中に年老いた男性の声が聞こえた。

『おい、おまいら』

「何だ?今声が…」

『山野バン、おまいじゃよおまい。そんなところでポカンとしとるでないでよ』

「バン!あれ!!」

アミの指さす方を見るとビルの上に設置されている巨大モニターに男性と思わしき人影が映し出されていた。

『漸く気付いたかでよ』

「お前は誰だ!!」

『わしか?おまいらが捜しておるオタクロスじゃ』

「そっちにも声聞こえるんだ…」

口ひげを撫でる動作からかなり年齢が高いと思われる。なんて大胆な事するんだこの爺さんは…巨大モニターに忍び込んで自分の物にしてんのか…。

『わしはなんでもお見通しでよ』

「オタクロスさん!頼みがあるんです!!」

『おまいらの願いは知っておるでよ!だが断る!』

「どうしてなんだよ!」

『断ると言ったら断るでよ〜』

舐めてる…完全に私たちの事を舐めている。モニターのその人物に今日一番の溜め息が出た。

「お願いします!オタクロスさん!」

『か、かわいい〜!!お、お嬢さん川村アミでよね?』

「え?そ、そうですけど…」

『お〜!!アミたんでよ〜!!』

アミを見た途端にがらりと変わった態度。アミはドン引きだ。因みに私も引いている。

『萌えるのぉ、アミたん、アミたん、萌え萌えアミたん!』

「いい年した爺さんが中学生の子どもに萌えるなよ…」

『はっ!!そこにおるのは真白ユキノちゃんでよ?』

「そ、そうだけど…」

『えぇの〜。リアルクーデレじゃのぉ〜!!』

「はぁ!?」

矛先が私にも向いた。なんて爺さんだ。とりあえず傍にいた数の背後にそっと身を隠した。

『いいでよ、二人の頼みなら聞いてやるでよ』

「本当ですか!」

『ただし、条件があるでよ』

「条件?」

『伝説のLBXを手に入れるでよ!さすればわしへの道が開けるでよ!』

突然出された条件に困惑した。伝説のLBXなんて何のことだか分からないし場所も分からない。カズが聞いても自分で探せと言われた。

「お願い、教えて!時間がないんです!!」

アミの全力のお願いに心が揺らいでいるオタクロス。よし、もう少しで情報が聞き出せそうだ。

「ほらユキノも!」

「はぁ!?」

モニターを見るとオタクロスが私を見て何かを待っている。え!?やれって言うのか!?

「た…頼むよ…あんたの力が必要なんだ…」

『おお!!いいでよ!!クーデレの中の貴重なデレでよー!!じゃ、ヒントを上げるでよ。』

どうやら今のでよかったみたいだ。この人本当によく分からない。しかし情報が聞きだせたともあって何とか一歩前進するようだ。

『タコと豚。その光と影が結び時紡ぐ高き山。太陽を背負いしヤギの中に我は眠れり…。では、待っておるでよ』

モニターの画面が消えた。とりあえずアキハバラに関係するタコと豚から考えた方がいいか…。

「タコと豚…。そうだ!タコランとブタミンだ!」

バンの言葉にはてなが浮かぶ。なんでもアキハバラにあるB級グルメらしい。なんでか楽しそうなバンはその店のある所に向けて走り出した。

「ちょっと!バン!!」

「一人で行くなよ!」

私たちもバンを追って走り出す。

食べ物屋がならず通りまで来るとバンの言った通りタコランとブタミンの店がほぼ向かいの位置にあった。ここで間違いないようだ。

「その光と影が結び時紡ぐ高き山…」

「…分かったわ!看板の絵よ!」

「…あぁ!なるほど!前と後ろか!」

「そう!タコランの前に有ってブタミンの後ろに有る。それが!時紡ぐ高き山!」

アミが指差した方には高くそびえたつアキハバラタワーがあった。後は太陽背負いしヤギだ!
私たちはアキハバラタワーに向けて駆け出した。
正面ゲートから中に入ったところでハンゾウが立ち止まった。

「ハンゾウ…?」

「なんでもねぇ、先いってろ」

「?行こう、バン」

何となくハンゾウの言うことを聞くことにし私はバンの手をひいて駆け出した。
エレベーターに乗って上の牧場ホールに向かう。電光掲示板にはヤギのアイドルが映し出されていた。

「ビンゴだな」

「このどこかに伝説のLBXがある」

すると突然ステージの照明が着いた。そこには後ろを向いて座っている五人組がいた。

「この世に悪がある限り」

「美貌と友情と」

「カレーパワーで」

「アキハバラの平和を守る」

「我ら、愛と正義のLBXバトラー」

「オタブラック!」

「オタピンク!」

「オタイエロー!」

「オタブルー!」

「オタレッド!5人揃って!」

「「「「「オタレンジャー!!」」」」」

きっちり特撮物を彷彿とさせる登場シーンをしてくれたのはアルテミスに出場していたユジン含むカラフルジャージ5人組だ。

「はい撮影終了でーす、お疲れ様でしたー」

「「「「「お疲れ様でーすってちょっと待てーー!!」」」」」

「チッ、帰ってくれないか」

てっきり流れで消えてくれるかと思ったのに…。

「ユジンさん!」

「あ!バン君!ここではオタレッドと呼んでください!設定上大事ですから!」

「設定あるんだ…」

思わず苦笑いを浮かべる。仕方なくそう呼ぶことにしよう。

「じゃあオタレッド!俺たち、伝説のLBX探しているんだけど…」

「流石山野バン。よくぞここに伝説のLBXがあると見抜いたな。いいだろう。伝説のLBXは君たちの物だ!ただーし!バトルで私たちに勝てたらだ!」

話すたびにポージングをするのはどうにかならないだろうか。見ていて疲れる。
オタレッドから投げられたDキューブは展開される。

「行け!イエロー!」

前に出てきたのは太った黄色いジャージの男、オタイエローだった。
ばんが矢類満々に前に出ようとするとオタイエローはアミを指名した。アミはきっとこの手の男にモテるんだ。なんとなくかわいそうだ…。

「がんばれーアミー」

「はぁ…やればいいんでしょ!でも!女の子だからって甘く見ないでよ!」

アミはカスタマイズし赤を基調としたカラーリングになったパンドラを取り出した。さて、私は席に座って観戦をすることにしよう。
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