オリジナル小説
□死神ノアサイス(仮)
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プロローグ
あの日、その日、この日も、黒井恭介は下らない日常に生きていた。
いつもの歩いている地元の景色、街並み、人々全てが何も変わる事のない、何の変哲もない下らない世界。
彼は世界に期待なんてしていない、幼馴染の神崎美海はそんな恭介を心配しているが、それさえも恭介にとっては意味のない、無駄な心配。
恭介や美海が住むこの町、黒鳩市には伝説がある。
県内でも大きな黒鳩市は黄泉川と呼ばれる海へと続く一直線の川を挟んで二つの町が存在している。
一つは現夜町、もう一つは星虚町、この二つは大昔、あの世とこの世の境界線を描いて創られた町と呼ばれていて、今はそんな妄想話を真に受ける住民達はいないが、昔からの伝承だと言われて、いくつかの迷信とこの黒鳩市が残されている。
迷信、その一つが『黒衣纏う紅蓮の死神は』なんて変な人達が明らかに好きそうなフレーズで、それを恭介や美海、現代に生きている人間達は皆、祖父母さえも下らないと思っている。
だが、彼は、住民は、この町は何も知らないのだ。
移しているモノ全てが真実じゃない、とこの町に住む人間達は知らないで、平和な日常だと勘違いをして生きているのだ。
だからあの日、その日、この日も黒井恭介は平凡な日常をいつも通りに生きて、そして全てが変わってしまったその時までこんな下らない世界に生きて行くんだと、信じ続けていた。
黒衣纏いし紅蓮の死神が現れるまでは―――。