銀高
□揺るぎないモノ
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――――想うのはいつも。
ぼんやりと浮かんだ小望月を見ながら盃を傾ける。
自分の選んだ道に後悔などないけれど。
―――それでも、時折あの日溜まりのような日々を思い浮かべて、銀時は目を細めた。
盃を傾け、酒を呑めば柔らかい冷たい感触が喉を通って心地好い。
故あって、腐れ縁となった武装警察真選組の依頼で報酬変わりに、局長近藤勲の部屋に隠してあった酒を頂戴して来た。
腐っても高官なだけあって呑んでる酒は味も質も上等だ。
そんな失礼極まりない事を考えながら、あんなゴリラには勿体ないと言って、何やら騒ぐ、地味な監察を無視してくすねて来た。
――――あんな暑い中、草むしりなどさせられたのだから罰など当たるまい。
盃を傾け、独り酒を愉しみながらそんな事を考える。
暫し、遠い日に想いを馳せて、次いで浮かんだのは今は道を違えた隻眼の幼なじみ。
思い出して、つきりと胸が傷んだ。
「………どうしてっかねぇ」
ぽつりと呟き、盃を置くと立ち上がり、月に誘われるように外に出た。