それで世界は
□騎士と魔女の、邂逅
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森へと続く道を、ひたすらに駆ける二騎の馬。それに騎乗しているのは二人の若い騎士であった。
その中でも更に若い、というか少々あどけなさの残る青年は、ちらちらと城のある町の方を見ている。
「なー、騎士団長ぉー…ホントにこっちで合っているのか?」
「…エイン、口調がなっていないぞ」
「騎士団長、本当にこんなところに魔女がいるのでありましょうか?」
先ほどのふざけた調子から一転、ピシッと背筋を伸ばして真面目な言葉を返した青年。
対し、彼に答える男の表情は晴れない。
「ああ。居るには居る。が………」
「が?」
「少々性格に難あり、だな。行っても会えるか分からん」
「…」
…ダメじゃん。
そう思ったのが顔に出ていたらしい。騎士団長が思い切り分かり易いオーラでスラリと腰元の剣を抜いたものだから、青年エインは慌てた。
「で…でさ!なんで、その魔女のことを知っているんすか?」
男はエインを一瞥し、溜め息をついた。話に付き合ってくれるらしい。
「あの方とは、彼女が幼少の期(ころ)からの知り合いだ。俗に言う幼なじみだな。…いや、どちらかといえば世話係か」
「…世話係?だんちょーが?」
「…ああ」
騎士団長の周りに暗雲が立ち込めているような気がする。エインは心持ち距離をとった。
「(ってか…団長に暗雲って…どんな奴だよ)」
普段彼は笑みを絶やさず優しく且つ厳しい男だったと記憶している。
というか、その騎士団長に暗雲を立ち込めさせるような御仁に会いに行くのに、何故自分を連れてきたのだろう。
とりあえず、今二人がここで馬に揺られているのには訳があった。それは四時間前に遡る。
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