それで世界は

□創世時代
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昔、この世界は天も地もなく、光も闇もなかった。
しかし、一つだけ命があった。
それを、人は後に神と呼ぶことになったが、それはまた別の話。


命は言った。


「この世界には私以外誰もいない。なんと寂しい、これ以上の悲しみが、この世にあるだろうか」


まあ実際、始まりの命がそう言ったかどうかは判らないが…うるさいな、物語とは多少の脚色を加えてあるものだから判らないのは仕方ないじゃないか。すすめるぞ。





命は大地と天を創った。
命は魂と、その器のつがいを創った。
しかし、彼はまだ寂しいままだった。魂達には感情(心)がなかったのだ。


「やはり寂しい、このような事を思うのは私だけなのだろうか」


その時、ちょうど偶然にも、ひとりの嬰児がふらりと外へ出て行ったのだ。そしてそれにつられたように、二人三人と。
最初に外に出たこどもは、頬に冷たいものを感じた。


「雨…」


そのこども達の顔に、『驚き』という表情が浮かんだ。次々とこどもが顔を歪ませていく。
驚き、悲しみ、そして心を得た喜び。



涙は、命の寂しさの象徴。それを浴びたこども達だけが、心を得たのだ。これが、人が心を得るまでの物語である。
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