long dream
□大人の一歩
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あの日ピクニックをしてから数日。
桜の開花は満開を向かえ、私はきれいな花びらに包まれながらまっすぐとのびた道を歩いていた。
今日、私は大学生になった。
細いストライプの入ったスーツに身を包み、音楽、新入生の声、家族の声、そして先輩達の声が響く学内を進む。
「あきちゃん!今日はラグビー部の歓迎会があるんだって!行ってみようよ」
面接を一緒に受けた子と早速落ち合い、2人で行動する。
4月はサークルや部活の勧誘期間らしく、式を終えて外に出た途端先輩に囲まれた。
友人は早速この大学の情報を仕入れており、どうやらラグビー部の新入生歓迎会が1番規模が大きいとのことだ。
「ねえ!君たち新入生?」
少し立ち止まれば声をかけられる。
このお祭りのような雰囲気に、これからの学生生活への期待がどんどん高まっていった。
勧誘の嵐をかいくぐり、今日の予定を2人で立てることにした。
今日は5人が日本にいる日。本当はお仕事の日だったが、たけちゃんが休みにしてくれた。
―入学おめでとう!
有意義な学生生活を送っていつかおじさんを養ってください。
飲みすぎんなよ!
私が喜ぶのを知って、添付されているのはたけちゃんと5人の写真。
今日はやはりラグビー部の歓迎会に参加することにして、時間まで色んなサークルの部室を回った。
そして夜7時、驚愕の新入生歓迎会が始まった。
「飲んでー飲んでー飲んじゃってー!」
物凄い勢いのコールで大量のお酒を飲み干す先輩達。
それを目の前で眺める私たち。
ラグビーの話なんて一切出てこなくて、新入生の間に入った先輩達がひたすらしゃべる。
「新歓なんてね!1年生同士がお友達になる場所だから!ラグビーなんてどうでもいいし!」
という女子の先輩。
「だから楽しんでねー!」
気づけば周辺にいる1年生とはすっかり仲が良くなって、皆で番号を交換することにした。
携帯を開いた途端驚いて画面に目が釘付けになる。
着信:11件
19:05 ジェジュン
19:15 ジェジュン
19:23 ジェジュン
19:31 ジェジュン
19:38 ジェジュン
19:40 ジェジュン
19:42 ジェジュン
19:43 ジェジュン
19:44 ジェジュン
19:44 ジェジュン
19:44 ジェジュン
何事かと思いすぐにかけ直す。
「ちょっとごめんね!」
何か事故でも起きていたらどうしよう。
焦る気持ちが体を揺らす。
繋がった電話に急いで声を出す。
「もしもし!?どうしたの?」
―あき?あき!!だめー!!
悪いことが起きたわけではなかったようだ。
―ストップ!のみかい!!
飲み会に過剰反応しているジェジュンの声と重なって、逆の耳からこんな言葉が聞こえた。
「あきちゃんも飲んじゃえー!!」
外に出ていればよかった。
スピーカーから叫び声が聴こえた。