long dream
□2つのおめでとう
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8月、もうすぐ夏休みが終わってしまう。
必死に机に向かって宿題をやるものの、さぼった分の反動は大きい。
「あーみんなの夕飯を毎日鍋にすればよかった」
などと言ってみるが、例え鍋にして料理の時間が少なくなったとしても宿題に取り掛かる時期は変わらなかっただろう。
それに私の仕事魂がそれを許さなかったはずだ。
「あきーいるのー?」
部屋の外からお母さんの声がきこえた。
「なに、今猛勉強中なんだけど!」
振り向くと同時に部屋の扉が開く。
「すいか切ったわよ」
でろでろに伸びた私のタンクトップを見ながら笑うと、お母さんはすいかを置いて出て行った。
「ただいまより気分転換を行います」
参考書に言い訳をし、すいかの前に移動した。
種を思い切り飛ばしゴミ箱を狙う。
うん、惜しい。
何度かやって、ふと我に帰る。
何年も着ている伸び切ったタンクトップを着ながらすいかの種を飛ばす女子高生。
…これではいけない。
家にいるとついだらしなくなってしまう。
すばやくすいかを食べ終え、今年買ったTシャツに着替えた。
「お母さん、コンビニ行ってくる」
コンビニに用があった訳ではないが、1日に1度は外に出なくては。
近所のコンビニに入り、雑誌を物色する。
迷いを捨ててデザートを一つ選び、レジに持っていった。
「くじ引いてください」
購入金額が500円でくじが引けるらしい。これでもかと言うほどかき回して取り出すと、なんとお菓子が当たった。
「いまお持ちします」
店員が景品を取りにいっている間、レジの脇にあったポスターが目に入った。
大手の企業主催の夏フェスだ。
毎年全国各地で開催されているらしい。
夏フェスって結構遅い時期にもやってるんだなと思いながら出演アーティストを目で追っていた。
まさかねと思いつつも彼らの名前を探してしまうのがファン心。
東方神起という文字を一度見て、見間違えたといって笑った。彼らのことが好きすぎて読み間違い聞き間違えが頻発だ。
「ってちがーう!」
店員さんが戻ってくる前でよかった。
つい言葉にしてしまったが、何が違うって、読み間違いではなかったということだ。
確かに、そのポスターに東方神起の名前があった。
彼らが神戸公演に出演するのだ。
「お待たせしましたー」
レジ袋にお菓子が入れられ、私はレジを後にした。