long dream
□アカペラ体験会
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世間の学生は海の日を過ぎて夏休みになる。
「高3の夏は必死で勉強しろ!」
担任の先生の言葉を半分聞き捨て席を立った。
私は受験勉強をする気はない。都内の大学の推薦入試を希望している。
だからバイトをしているというのもある。
夏休みに入り、いつもどおり宿舎を掃除していたある日、掃除機をかけていたときたけちゃんからメールが来た。
−来週木曜から地方で日曜は一回宿舎にもどるぱー
ぱーってなんだ。
吸い込みすぎたカーペットを掃除機からひっぺがし、スケジュール帳に予定を書き込んだ。
木曜日までの予定は聞いている。今は本当に韓国と日本を頻繁に行き来している。
今日のバイトが終わったら、次は来週の日曜日だ。
テーブルの上に置いてあった彼らからのメッセージを見る。
【きょうは すぱげりーを たべました
チャンミン】
鍋の火を止め、部屋全体を見て怠っている場所がないかチェックすると、バッグを持って外に出た。
自転車をこぎながら少し彼らのことを考える。
そういえば、この前横浜のイベントに出たと言っていた。
「イベントって、どんなことしてるんだろ」
ペダルを回しながらぼそっと呟くが、それに答えてくれる人などもちろんいなかった。
次のバイトまでの1週間は、推薦がもらえなかったときのことを考えて勉強をした。
その間も、頭をよぎるのは彼らのこと。
今頃食事をしているだろうか。
栄養のいいものを食べているだろうか。
また風邪をひいていないだろうか。
「心配だなあ」
全く動かなくなったシャーペンを置き、外を眺めた。