long dream
□はばたなの願い
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「なんじゃこりゃ」
制服のシャツの袖を限界まで捲った私が宿舎に入った第一声だった。
リビング、ダイニングにまで広がった無数の長方形の紙。
文字がかいてあったりなかったり。
ため息をついてから全ての紙を回収した。
【アカペウたいけWかりのせりこら】
なんじゃこりゃ。
なんとなく、彼らがこの紙に何かを書こうとしているのは分かった。
文字が書いてある紙だけ別にして、リビングのコーヒーテーブルにそれを置いた。
今日も家事を終えて帰る支度をしていると、タイミングよく携帯が鳴った。
メールはジュンスからだった。
【今日は8時頃帰ります。お願いしたいことがあるので家にいてください。】
明らかに本人ではないことが分かったが、了解の返信をした。
私が彼らを待つ時間は大抵宿題の時間。アルバイトを初めてから意外と成績がよくなってきた。
今日も宿題をやっていると、珍しく時間通りに彼らが帰ってきた。
「ただいまー!ひさしぶりですねぇー!!!」
リビングのドアを蹴破って入ってきたのはメールをくれたジュンスだった。
1ヶ月ほど交流がなかったので、彼らの顔をみるのは確かに久々だった。
ジュンスは嬉しそうに私に挨拶すると、一度自室に入っていった。
あとの4人も私を見て嬉しそうに挨拶をしてくれ、5人がリビングに集まった。
「ご飯できてますよ」
くつろぎ始めた彼らに声を掛けると、ちょっと重そうな腰を上げこちらにやってきた。疲れているのだろうか。
今日の夕食であるしょうが焼きを無言で食べきった彼ら。
ふと、ジェジュンが呟いた。
「にっほんご、むじゅかしー…」
そうか、慣れない日本語に苦労し、きっと何かのきっかけで少し嫌になってしまったのだろう。
「そうですね。私だって難しいんだもん、みなさんとっても大変ですよね」
伝わるような日本語で元気付けるのは難しかったが、こころなしか皆の顔が少し明るくなった気がした。
「私がいる時は無理して日本語使わなくていいですよ。私は皆さんが楽しそうにしているところを見るのが楽しいので」
残念ながらこの言葉は伝わらず、きょとんとした瞳が10個も見えた。
うーむ。
英語にしてまで伝るべきか迷っていると、ユチョンが先に英語を使った。
“なんでそんなにいい奴なの?”
日本語、ちゃんと理解できてるじゃない。