long dream

□ヤンキー迷子
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夏の香りがし始める6月、私はここ1週間、宿舎へ行っていない。

日本でのデビューシングルを発売後すぐに彼らは韓国へ戻っていった。韓国でもすぐに違うCDを出すのだという。

「忙しいんだなぁ」

学校帰りに自転車をゆっくりとこぎながら自宅へ向かう途中、空に向かって呟いてみた。

日給7千円といえど、働くことができなければ貰えるはずもない。今月は何度行くことができるのだろうかと頭の中で計算するが、いかんせん答えは出ない。いや、出そうとはしていないのだ。

「早く戻って来ーい」

力なく叫ぶと、後ろに回していたペダルを逆回転させた。

働きたいと思う気持ちと共に、寂しさが連なるのを感じていた。

その気持ちを悟ったのか、たけちゃんからメールが届いた。


―今日の夜から2日間日本でっせー飯はいらんーお仕事よろー


軽すぎる業務指示を読み終わると、再度後ろに回していたペダルを踏みなおし、思いっきり力を込めた。

都会に制服を着た女子高生が全速力で自転車を漕いでいる姿はさぞ滑稽だろう。客観視した自分を想像しにやけながら坂道を下る。

そのままカーブを曲がると、猫背でがに股、腰パンで足の裏を引きずり気味で肩をゆらして歩いている若者の後ろ姿が見えた。
こんな都会にヤンキーか、内心びくびくしつつ追い越そうとしたとき、ちらりと覗いたその顔に見覚えがあった。



「ユノさん!?」


まだいないはずの彼が、目の前にいた。
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